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日刊 温暖化新聞|エダヒロはこう考える

20101004

コミュニケーション・マーケティングWGの目的と活動のご紹介

環境省の中長期ロードマップの小委員会の中に、いくつかのワーキンググループ(WG)が設けられています。その1つが私が座長を務めるコミュニケーション・マーケティングWGです。9月の小委員会で、各WGからの発表がありました。

私もコミュニケーション・マーケティングWGの基本的な問題意識や「これからどのようなことをやっていくのか」を発表しました。以下が、私の発表内容です。発表に使ったスライドはこちらからご覧いただけます。
http://www.env.go.jp/council/06earth/y0611-12/mat04.pdf

~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~

ありがとうございます。コミュニケーション・マーケティング・ワーキングをやっています枝廣です。このワーキンググループは、今回初めて作られたもので、2カ月ほど前に立ち上げられて、今、張り切って作業を進めているところです。

もともとは「コミュニケーション・ワーキング」という名前も出ていたのですが、ぜひそこに「マーケティング」を入れてほしいということで、マーケティングの要素を入れて進めています。

それはなせかと言うと、作ったロードマップをいかに生活者に伝えるかという、一方通行のコミュニケーションだけではなくて、生活者の実態とか実感に沿った形にロードマップを改善していく必要があると思っているからです。

ですから、two-wayのやりとりをしながらロードマップも良くし、ロードマップの内容ややってほしい行動も生活者に伝えていく。そういった意味で、マーケティングというのをWG名に入れております。

ロードマップだけではなくて、先ほどから話が出ていますが、たとえば日本の企業や産業界が作ってきた低炭素製品もしくはサービスというのは、本当に素晴らしいものがたくさんあると思っています。ただやはり、生活者と話をしていると、それが伝わっていない。すごくもったいないなと思うことがいっぱいあります。逆に、生活者のほうからいろいろなニーズを、もう少しモノづくりなり、サービスづくりなりに活かしていくこともできるんじゃないかということで、ここでもtwo-wayができればなと思っています。

今日は中間報告ということで、今回、ワーキング初めての報告になりますので、基本的な問題意識と、これからワーキングでやろうとしていることを発表させていただきます。ぜひ、委員の皆様からいろいろなご意見、そして今の私たちに欠けている視点、「こういうことも考えたらいいよ」とか、それをいただいて、できるだけ良い形でワーキングを進めていけるよう、ご示唆をいただければと思っています。

「マーケティングの神様」とよく言われるドラッカーが、こういうことを言っています。私が言うまでもなく、皆さんご存じと思いますが。「マーケティングとは売り込む必要をなくすことだ」と。「売れていくようにすること」がマーケティングなんだということを、ドラッカーが言っています。

生活者に対してコスト負担の話もよく出ますが、それを無理やり、「こうしないといけないから高くても払うんだ」というような形の説得という形だけではなかなか広がらないだろうと思っています。

たとえばiPodでもiPhoneでも、エコカーでもエコ家電でもいいですが、買いたいものは、生活者は買います。それは別に、コスト負担だと思って買っているわけではなくて、買いたいから買う。

ですから、できるだけロードマップで打ち出している施策--買い替えもたくさんありますし、取ってほしい行動もあるわけですが--、それを説得して、「コスト負担してでもやれ」という形のコミュニケーションではなくて、いかに買いたいなと思うものにするか、いかに買えるものにするか。そのような形で考えていきたいと思っています。

2ページ目に、基本的な問題意識の最初のスライドがあります。基本的に目標を作って印刷して配っても、それはなかなか実現しないだろうというのが、最初の問題意識としてあります。2ページ目の右下の所にあるのは、ご存じの方、多いと思いますが、ロジャースの「イノベーション普及理論」のイノベーションの普及段階です。

下から、最初はイノベーターという新しいものに飛びつく人たちがいて、その姿を見て、アーリーアドプターというフットワークの軽い人たちが採用して、その姿を見て、マジョリティの中でも動きやすい人たちが最初に動いて、それを見て、「みんながやっているなら」ということで動く人たちがいる。最後までやらないラガードという人たちもいるわけですが。このような形で新しいものや考え、製品は広がっていくと考えられています。

左側にあるのは、今、ロードマップで検討している普及目標を、このイノベーション普及曲線に当てはめてみたものです。これを見るとわかるように、たとえば高効率給湯器のようなものは、かなり頑張って、ラガードまで近寄らないといけないほど大きな普及曲線を描かないといけないということがわかります。

それぞれ、次世代自動車にしても太陽光発電にしても、今ほとんどイノベーターの段階なんですね。これを、どうやってアーリーアドプターからアーリーマジョリティに持っていくかということを、かなり戦略的に考えないと、「こういうことをやる必要があります」と言うだけでは、なかなか広がっていかないだろうと思っています。

3ページ目の問題意識の続きですが、今のロードマップは、数値目標が出されているだけで、一般の人たちとの、自分の生活とのつながり、もしくは自分とのつながりというのが、非常に薄いものになっています。これは、生活者ヒアリングをやっても、周りの人たちに聞いてもそうですが、まずロードマップそのものを、ほとんどの人が知らないですし、それを見てもらったとしても、「まったくピンとこない」という答えがほとんどです。

数値を積み上げてロードマップを作っていますので、できるだけ削減ができるようなものへの買い替え、もしくは導入というのを中心にロードマップは作られています。それをどうやって進めるかは大事ですが、生活者がすぐに取り組める、数値としては小さいかもしれないけれど、でも最初の一歩としては重要な、そういったものも入れていかないと、今のままだととても遠いものになってしまう。

もう1つ大事なのは、下のほうに書いてありますが、じゃあ、ロードマップの目標が達成されたら、たとえば25%減らすことができたら、どういう暮らしになっているのかというイメージが、今のロードマップの中からはわからないことです。

「ああいう姿になりたい」「ああいう暮らしをしたい」「今よりもそのほうが幸せになれる」と思うと、人々は放っておいても動くわけで、そのように惹きつけるようなものにはなっていない。「○○を××年までに△△台導入する」という形だけになっていますので。生活者の実態に沿った形で、じゃあ、目標達成の暁にはどういう暮らし、どういう社会になっているか、ということを描いていく必要があるというのが、もう1つの問題意識です。

4ページ目が、今ロードマップで、家庭部門で、どのような削減が必要とされているかということを示したものです。家庭部門では、2020年までに、今から4割~5割減らす必要があるということになっています。

ただ、電力の排出係数がこれから改善していくということが想定されていますので、それによって、家庭でのエネルギー消費量が変わらないとしても、14~19%は減らせる。これは真水が何%かによって違いますが。しかし、それが減ったとしても、まだまだ残る部分、つまり、25~32%は住まいの中で、さまざま形で、技術や心掛けや、新製品の導入などで減らしていく必要があるということがわかります。

生活者にヒアリングや話をした時に、「じゃあ、2020年25%として、私はどれぐらい減らす必要があるの?」ということをまず聞かれます。なので、こういったところの情報も出していく必要があるわけですが。

こういったことを踏まえて、5ページ目に、今回のワーキングでやろうとしていることを図でまとめてあります。ワーキングの目的そのものですが、これはロードマップに挙げられている対策行動を普及する、つまり生活者に行動を変えてもらう。たとえば買い替えをするとか、新しい太陽光発電を付けるとか、もしくはそのほかの行動もそうですが、それをするためにどのような情報提供、もしくは施策が必要か。これを探していこうということです。

左側の点線で囲ってあるところが、生活者および現在の対策の実態調査ということで、もともとは4月にした生活者ヒアリングを中心に進めてきていますが、既存研究へのさまざまなサーベイをして、重要な視点を抽出しているところです。そのあと、それに基づいてアンケート、ヒアリングを、これからやっていくことになっています。

それと並行して、戦略検討ということで、人の行動が変わるというのはどういうことなのかということを、理論的に枠組みを検討して、単に思いつきのヒアリングやアンケートではなくて、枠組みの中で検討をしていこうと思っています。

ちなみに、このワーキングの委員の先生方のリストは6ページ目に載っていますが、おそらくこれまでのこういった委員会では珍しい顔ぶれの方々がたくさんいらしゃいます。行動経済学の専門家、社会学の専門家、環境社会学の専門家、心理学の専門家。こういった方々に参加していただいて、そういった枠組みで、どのような理論の枠組みが立てられるかということを、今、検討しているところです。

現状の分析、それから今の、どういったことが障壁になっているか。さまざまな情報を集めて、その枠組みとともに、マーケティング、コミュニケーションの戦略を作っていくということになっています。

7ページ目に、時間軸とともにその検討の流れを書いていますが、今は、2カ月の間に、さまざまな委員の先生方のそれぞれの知見、これまでの研究を発表していただいて、共有して、今回どのように生かすことができるかという議論をしています。

たとえば、低炭素化そのもの、温暖化そのものにこれまで取り組んでいらした研究者はいらっしゃらないんですが、医療の分野であるとか、同じ環境問題でもリサイクルをずっと研究しているとか、そういった研究者の方が参加してくださっているので、そこでの知見を、温暖化対策にどう活かせるかということを、今、検討しているところです。

8ページ目にあるのが全体の重要な視点ということで、こういった切り口で考えようと思っています。1番から4番まで4つ視点があります。「人の視点」「モノの視点」「ネットワークの視点」「仕組みの視点」。それをそれぞれ、今から説明していきたいと思います。

「人」というのは、生活者一般ととらえることはできなくて、それはライフステージによっても違うし、たとえば子育て中の家族なのか、それとも単身赴任している方なのか、もう定年退職して悠悠自適の方なのか、さまざまにライフステージによっても、その人の暮らし方、もしくはできる削減、もしくは対策行動が変わってきます。

それから、住まい方というのも大事で、これは生活者ヒアリングにも出てきたのですが、賃貸に住んでいると、やはりできることが限られてしまう。もしくは集合住宅だと、一戸建よりもできることが限られる。こういったことが出てくると思います。

それからその人が、普段どういった行動をしているか、もしくは意識しているか。このような人の視点でカテゴリーを分けて、今どういうカテゴリーの人たちがどれぐらいいるのか、それすらあまりわかっていません。世帯の分布などはわかりますけれど、意識レベル、行動レベルですね、このあたりも含めてカテゴリーを分けて、それぞれに対するきめ細やかな対策が提案できるような、1つのベースを作っていこうと思っています。

それから「モノの視点」というのは、太陽光発電とかエコカーとかマイバッグとか、これも十把一からげには言えないわけで、そのモノの持っている特性、特徴によって、どのように普及を推し進めるかという戦略が変わってきます。これがモノの視点になります。

「ネットワーク」というのは、主に人的ネットワーク、対人ネットワークのことです。人が行動を変えるときには、自分だけで考えて決めるという場合もありますが、周りからのいろいろな影響を受けて変えることが多いです。「あの人もやっているから」とか「みんながやっているから」とか、そういった対人ネットワークをどのように活かしていくか、もしくはつくり出していくかということが、ここでの関係になります。

4番目の「仕組み」ですが、やりたい気持があっても、それができないさまざまな障壁があります。それは、本人の努力だけでは乗り越えられない障壁もたくさんある。それは制度として、もしくは仕組みとして、受け皿を社会や国のほうで作っていく必要があります。

こういった4つの視点を今、考えています。それぞれについて、少しずつ例を挙げながら、以下、ご説明しようと思います。

9ページ目が、最初の重要な視点の「人」ですが、先ほどはライフステージという話をしましたが、生活者ヒアリングで話を聞いていて大きく出てきたのが、「ライフイベント」です。ある出来事が、低炭素行動に向かわせる大きなきっかけになる可能性がある、ということに気が付きました。

たくさんの方から出てきたのが子どもです。子どもが生まれた時、もしくは子どもが小学校に入った時、子どもが学校から何かを持って帰ってきたとか。そういった子どもに関するもの。

もう1つは引っ越しというのが、非常に大きなライフイベントでした。引っ越しというのは、いろいろなモノを買い替えたり、引っ越し先を選ぶことも含めて、大きく住まい方、暮らし方を変えるきっかけになりますので、

としたら、日本で今どれぐらいの人が引っ越しをしていて、引っ越しする人たちのどれぐらいが低炭素の引っ越し、つまり低炭素方の暮らしに変わってくれれば、どれぐらい減るかということを計算できる。

それがもし有効な対策だとしたら、これから引っ越ししようとする人たちにどうやって情報を届けて――それは引っ越し業者と組むのか、よくわかりませんが、どうやって情報を提供して、低炭素型への住み替えを導くか。

「きめ細かな」と先ほど言ったのは、たとえばこういう例です。こういった形で、全部やることは無理ですけど、対策の効果が大きいと見込まれるところに対しては、具体的に政策もしくは施策を作っていきたいなと思っています。

10ページ目は、同じ「人」ですが、こちらは住まい方になっています。左に書いてあるのは、当然ですけど、世帯人数が多いほど1世帯当たりのエネルギー消費量は大きい。だけれど、世帯人数が少ないほど、1人当たりのエネルギー消費量は多いということになりますので、たとえば大家族で住んでいる住まい方なのか、それとも単身で、1人で住んでいるのか。それによってもやはり、取ってもらう対策行動と、そのアピールの仕方が変わってくる必要があります。

今、その家族の類型とか、持ち家か借家か等、その構成は右のほうに書いてあるようになっていて、ここで大きな要素となりそうなところにまず焦点を当てて、今後ヒアリング、アンケート等を調査して、具体的な施策につなげていきたいと思っています。

11ページ目は、「人」の中でも、実際にもう低炭素行動をしているという人もいるし、していないという人もいる。そのあたりの、いわゆる買い替えではなくて、心掛け行動、「気をつけて○○します」という、もしくは安価なものを買うことで行動する。

たとえば、今、ロードマップで挙げられているのは、かなり高いものの買い替えですので、それしか低炭素化に寄与する道がないというメッセージは、生活者にとってあまり好ましくないと思っています。

それぞれの心掛けを含めて、小さな行動も含めてやっていくと、たとえば、特にエネルギー消費量で言うと、頑張ればかなり減らせるという数字も出ていますし、今、どういったことをやっているのかということ。それも1つの類型になるかと思います。

12ページは意識と行動ということで、実際に低炭素行動もしくは温暖化問題ということが、「ワガコト化」できているかどうか。自分のこととして何らか取り組もう、取り組む必要があると。もしくは取り組んでいるか。それとも、温暖化って大きな問題だと思うけど、自分には関係ないと思っているのか。そのあたりを調べて、そういうことによってアピールの仕方も、きっと変わってくるだろうということです。

13ページは行動経済学の先生からの資料で、どういったところで枝分かれをして、どういった項目を立てて聞いて、どのような分析をするかということです。私たちは、たとえば「○○に買い替えてほしい」とか、「○○を買ってほしい」とか、「こういう行動を取ってほしい」というふうに言いますが、実際にその行動に至るまでには、さまざまな分岐とプロセスがあって、多くの人がどこで詰まっているのか、もしくは次の分岐を望ましい方向に行ってもらうためには、どういったコミュニケーションが必要なのか。そういったことをこれから見ていく必要があると思っています。

14ページ目は、これは環境社会心理学の知見ですけれども、さまざまなものを認知して、どのように行動に至るかという。これもいろいろなモデルや枠組みができています。ですから、先ほども言ったように、低炭素行動を取ろうという目標意図ができている、できていない。それは何が効いている、もしくは何が足りない。意図があったとしても、行動に結びつかない場合もたくさんある。行動意図に結びつけるには何が必要か。こういったところをこれから分析、見ていくつもりでいます。

もう1つ、ここには書いていないのですが、もうひとつ大切な視点は、非常にエコ意識が高くて、低炭素行動を取ろうと思って、できるだけ小まめに電気を消したり、マイバックを持ったり、一生懸命やっている。だけど、ほんとにそれがCO2の削減につながっているか?ということです。たくさん行動をやっているし、ほんとにそれは素晴らしいけれど、実際のCO2の削減で言うと、もっとほかに見たほうがいいところがある。これを「つもりエコ」、やっているつもりという、「つもりエコ」という呼び方があります。

たとえば、「私はレジ袋をもらいません」と。「それで低炭素に貢献しているんです」と。年間120枚レジ袋を断ったとして、年間にだいたい20キロぐらいのCO2が削減できるそうです。だけど、そう言って買い物に行くときに車を使っているとすると、それで年間5トンぐらい出したりするわけです。

なので、一生懸命やるつもりがあって行動を取っている人が、本当にターゲットに沿った行動にできるだけ移っていってもらうにはどうしたらいかということも、これから考えていく必要があると思います。

もう1つ、ここに書いていない大事なことは、人が、こちらが望んでいる行動を取るときには、エコ以外の要因もけっこう大きいということです。これは、この小委でも何度か話が出ていますが、たとえば二重窓にする。これは光熱費だけで元を取るのは非常に難しいとしても、でもそのほうが心地が良いとか、結露しなくて健康にも良いとか、防犯上安心だとか、いわゆるエコそのものもしくは光熱費以外のベネフィットが大きいと思ったときに、人は行動を取ります。

ですから、「環境だから」「低炭素だから」と、その切り口だけではない切り口をどのように作っていくかということも考えていきたいと思っています。

15ページ目ですが、これは心理学に――私は心理学の専攻なので、非常にこのワーキングができてうれしいと思っているのですが――「認知的不協和」という考え方があります。ご存じの方が多いと思いますが。たとえば自分が「こうすべきだ」と思っていることと自分の行動が違う場合、行動を態度に合わせるのは難しい。

たとえば、たばこを吸ったら健康に良くないと思っている。だけど自分はたばこをずっと吸ってきた。つまり態度と行動が違うときに、禁煙すればいいんですけど、行動を態度に合わせるのは難しいので、態度のほうを行動に合わせちゃう。「たばこを吸ったって、みんなが死ぬわけじゃない」とか、そういうふうにいろいろな正当化をするわけです。これは人間の心理としてあります。

低炭素行動についても、この正当化のメカニズムというのがかなり働いていて、「わかっているんだけど、でもいろいろな理由でやらない」という人たちがいるわけです。たとえば、「私にはもっと大事なことがある」とか、「私はリサイクルはやっているんです」とか、「○○さんはやってないじゃないですか」とか、「私1人やったって何になるんですか」とか、「私は生活するのにギリギリで、そんな余裕はないんです」とか、「そのうち素晴らしい技術ができて問題解決できるから、私はやらなくていいんです」とか、いろんな正当化のメカニズムが、心理学的にはわかっています。

なので、できればこういったところも、行動すべきと思っているけどしていない人たちが、どのような正当化を使っているのかわかれば、その正当化の枠を超えてもらうための、コミュニケーションなり戦略なり施策を作ることができるかなと思っています。

このように「人」について、いろいろな観点で考えていきたいと思っているんですが、すべての人を対象にすることはできないし、あまり現実的でもありません。次の16ページにありますが、じゃあ私たちが、このロードマップに載っているさまざまなものをできるだけ普及を押し上げていくためには、どの人たちにアプローチすべきか。最初にアプローチすべき人たちはどこにいるのか。それを考えていく必要があると思っています。

「打てば響く人たち」と書いてありますが、言ってもわからない、もしくはその重要性を感じない人に一生懸命売ろうと思っても無理なわけで、最初にアプローチするのは、環境意識とか社会規範の意識が高くて、ある程度コストが負担できる人たち。その人たちがうんと使うことで、コストが下がって、手に入りやすくなって、周り中が使うようになって、という形でイノベーション普及理論という普及カーブが上がっていって、多くの人たちに広がっていくと。

イノベーション普及理論でも常に言われるんですが、革新的採用者というのは、モノが何であっても存在しています。何でも新しいものをトライするという方はいらっしゃる。ただ、そこから、アーリーアドプターとかアーリーマジョリティに行けるかどうか。

ここは「キャズム」といわれる深い谷があって、そこを超えられない製品が多いので、大体、新発売されても、ほとんどのものは消えていくといわれています。ですから、その深い谷をどのように橋渡しするかということを、かなり戦略を作っていかないと、放っておいては多分、谷に落ちてしまうのではないかというふうに思っています。ここまでが「人の視点」です。

17ページにあるのは「モノの視点」です。先ほど言いましたが、モノによって、それぞれの普及属性が違う。つまり、ここに属性として左側に「相対的優位性」「両立可能性」「複雑性」「試行可能性」「観察可能性」とありますが、これらはイノベーション普及理論で言うところの普及属性です。こういった属性があるものは普及する、という考え方です。

なので、これから普及させたいものを、こういった観点から分析して、それをどのように強めるか、もしくはマイナス点があるとしたら弱めるか。そのギャップを何とか乗り越えていくような形で、モノについても分析をしていきたいと思っています。

18ページにあるのが「ネットワーク」で、先ほど言いましたが、ほかの人への影響があります。これはリサイクルの研究をされている先生から、リサイクルでは特に対人ネットワークが効くとうかがっています。多分、リサイクルだと、ごみを出している出し方なども周りの人に見えるということもあるでしょう。

それに対して低炭素行動というのは、家の中で1人でやることが多くて、それが外の人になかなか見えにくいという点で、対人ネットワークもしくは社会規範が効きにくいというマイナスはあると思いますが、こういったところを分析して、どうやって政府から1対1で国民にメッセージを届けるだけじゃなくて、人々の間でのネットワークを通じて、普及したいものを普及させていくか。それを考えていきたいと思っています。

19ページが、4番目の重要な視点の「仕組み」です。先ほど言いましたように、コストダウンして大きく広げていくためには、最初の人たちに使ってもらう必要があります。ただ、普及するための障壁というのもいろいろ、少なくても生活者ヒアリングではわかってきていて、それをどう乗り越えるかという対策を作っていかないといけない。

たとえば、1つは「賃貸だから対応できない」というのがあります。それに対しては、エコアパートに住み替えるという、エコアパートというオプションが、もしかしたら必要かもしれない。

または、「何年で元が取れる」と言われても、「初期費用そのものが出せません」という人たちもたくさんいる。そうしたときにはリースとか、もしくは、次の20ページにありますが、「緑の贈与」という、高齢者で割と裕福な、お金に余裕のある人たちが、次世代に買い替えるものを買ってあげるという形で、グリーンな贈与を進めるという。これで日本の中で高齢者から現代世代への資金の移行と、それがグリーン化していくということで、とてもいい仕組みだと思うのですが、このような具体的な制度の提案もできたらと思っています。

21ページに先ほどの図がありますが、これからこのような問題意識を持って、まずヒアリングをして、それを元にアンケートを設計してやっていこうと思っています。

そのあと、簡単にその予定が書いてありますが、生活者ヒアリングの第2弾として、前回は東京で、子育ての主婦を対象にしましたが、今日このあと、午後から福井に移動して、福井で4つの対象についてヒアリングをしてきます。

24ページにありますが、東京と同じように子育て主婦もありますが、前報告した時に皆さんからご意見をいただいて、広げたほうがいいということで、私たちもそうだと思いますので、団塊の世代、単身の勤労者、それから実際に太陽光発電とか高効率給湯器を付けた方に、どのようなプロセスで、何がきっかけで、何が効いたかということをお聞きしてこようと思っています。

それを元にアンケートをしますが、10月末を目指して、この委員会に対する成果物として考えているのは、まずは生活者を味方につけられるような、きめ細かな対策メニューをできるだけ、部分的としても考えていこうと思っています。

それから提示だけではなくて、実際に橋渡しをするような、社会の受け皿としての仕組みとか制度の提案もできればと思っています。それから、たとえば先ほどのエコアパートとか、生活者は、こういう製品やサービスがあったら低炭素の暮らしができると思っているという、そういった生活者の側のニーズを、供給側にもお伝えできたらと思っています。

最後になりますが、コミュニケーション戦略として、どう伝えれば行動変容につながっていくのか。そのときに、たとえば環境コンシェルジェとか、地域の活動家の方が使えるような、ガイダンスとかマニュアルのような形でコミュニケーション戦略をまとめていくことができればと思っています。

以上、これからやりたいこと、問題意識をお話ししましたので、「こんなことも考えたらいいよ」とか「この辺の視点が抜けているよ」とか、ぜひいろんなご意見をいただければと思います。

~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~

面白そうでしょう?! ワクワクしながら勉強・実践中!です。

あと1ヵ月ぐらいで、その時点でのとりまとめをするために、福井での生活者ヒヤリングに続いて、対象層を広げての東京でのヒヤリング、アンケート、ワークショップと、具体的なプロジェクトを進めているところです。

 
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