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日刊 温暖化新聞|温暖化FAQ
個人
日本の二酸化炭素排出量のうち、家庭からはどのくらい出ているのですか?
日本が排出している二酸化炭素を、「産業部門」「家庭部門」「運輸部門」など、部門別に分けて見ると、このような円グラフになります。
「あれ、円グラフが2つあるぞ?」と思われたことでしょう。家庭部門は、上のグラフでは5.2%ですが、下のグラフでは13.5%になっています。似ているようで、ちょっと違うこの2つのグラフは何でしょうか?
よーく見ると、上のグラフには「各部門の直接排出量」、下のグラフには「各部門の間接排出量」と書いてあります。どういうことなのでしょうか?
電力を作る発電部門(エネルギー転換部門)で、たくさんの化石燃料を燃やし、たくさんの二酸化炭素を出していることはご存じですよね。さて、ここで出るCO2は、電力会社の排出なのか、それとも、その電気を使うユーザーの排出なのか?
「直接排出量」は、発電に伴うCO2排出を、直接排出しているエルギー転換部門の排出としてカウントしたものです。一方、「間接排出量」は、その電力を使うユーザー(企業や家庭など)に、電力消費量に応じてCO2排出量を割り当てて計算したものです。
ですから、エネルギー転換部門は、「直接排出量」では30.7%と多いですが、「間接排出量」では6.1%しかありません。家庭部門は、「直接排出量」では5.2%ですが、「間接排出量」では13.5%になります。
「直接排出量」と「間接排出量」のどちらで考えるのがよいのか、一長一短あります。家庭部門で考えてみましょう。私たちが直接排出しているのは5.2%ですが(主にガスや灯油です)、私たちが使っている電力も含めると、13.5%になります。
電力消費からのCO2排出は、電力消費量×排出係数 で計算されます。
つまり、「どのくらいの電力を使っているのか」、そして「単位当たりの電力からどのくらいのCO2が出るのか」の両方から計算されるのです。
私たちが節電すれば、「どのくらいの電力を使っているのか」は減ります。私たちが影響を与えることができるのです。
一方、「排出係数(単位当たりの電力からどのくらいのCO2が出るのか)」は、私たちにはコントロールできません。発電に伴うCO2、つまり排出係数は、発電の仕方(火力発電なのか、水力や自然エネルギーなのか、原子力なのかなど)によって違うからです。電力会社がどのような発電方法をしているかによって、各電力会社の排出係数は異なります。
他国の例のように、消費者が「私はグリーン電力をちょうだい」と選べれば、私たちも排出係数を変えることができますが、今の日本のように、電力を選べないしくみでは、電力会社が組み合わせた発電方式で排出係数が決まってしまいます。
つまり、市民や企業などのユーザーに省エネを訴えるには、間接排出量のほうがアピール力が強いでしょう。電力消費量を減らせば、間接排出量を減らしていけます。
一方、発電の燃料転換(化石燃料から自然エネルギーへ)の意義は、直接排出量でないと見えなくなってしまいます。近年、日本では石炭火力発電が増え、そのために排出係数が悪化しています。ユーザー側が一生懸命省エネ努力をしても、排出係数が悪化してしまうと、間接排出量は減らない、または増えてしまいます。
エネルギー転換部門の排出量が最も大きいことを考えても、ユーザー側での省エネ努力を訴えるだけではなく、エネルギー転換部門の影響力の大きさを明確にし、努力を促す必要があります。
ちなみに、国際的には「直接排出量」がCO2排出計算の基礎とされています。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)でもそうですし、EUで行われている排出量取引制度も、直接排出量をベースにしています。
「日本では、電力会社が石炭火力が増えていることなどを目立たせたくないから、間接排出量を前面に出しているのではないか。問題を直視できるデータで議論しないのはおかしいのではないか」という声もあります。
部門排出量の統計やグラフを見るときには、ぜひ「これは、直接排出量なのか、間接排出量なのか」を見分け、「家庭部門が増えているから、日本の排出量が増えているのだ」という議論を聞いたら、「考えるべきは、直接排出量なのか、間接排出量なのか」を考えるようにしましょう。
いずれにしても、家庭部門からのCO2排出は、直接排出量で5%強、電力も含めた間接排出量では13%強です。より多く出している他部門の変革を求めつつ、自分たちの排出量もしっかりと減らしていきましょう。