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日刊 温暖化新聞|温暖化FAQ
対策の考え方
空気中のCO2を回収して、地中や海底に貯留する技術が開発されつつあるそうですが、この技術が実用化されれば、温暖化を心配する必要はないのではありませんか。
CO2を回収・貯留する技術は、炭素隔離貯留技術(Carbon Capture and Storage、以下CCS)と呼ばれています。現在のところ、火力発電所や製鉄所などのCO2濃度の高い排ガスからCO2を回収し、地中や海中に貯留する技術が実用化されています。
CO2の回収技術を大きく分けると、(1)固体吸着剤に吸着させる(物理吸着法)、(2)吸収液に溶解させる(化学吸収法)、(3)CO2だけが透過する膜で選り分ける(メンブレンフィルタ法)、(4)極低温で液化して沸点の違いを利用して分離する(深冷分離法)という4種類になります。CO2発生源の規模と特性によって、どの方法が効率的か異なります。例えば火力発電所では、高温で大量の排ガスを短時間に処理・冷却する必要があるため、ガスの冷却効果も期待できる化学吸収法が用いられることが多く、都市ガスなどを燃料源とする小型燃料電池では、構造が簡単で維持管理の容易なメンブレンフィルタ法が用いられることが多いようです。
こうして集められたCO2は、地中(地中貯留)、海底(海底貯留)、海水に溶かす(中層溶解)、といった形で、大気へ出て行かないように貯留されます。現在進められているプロジェクトの多くは地中に貯留する方式を採用しています。
CCS技術が普及すると温暖化問題が解決できるように見えます。しかしCCS技術には、貯留可能量の限界やCO2漏出の可能性といった不安要素もあります。さまざまな研究が進められていますが、どのくらい漏出するのか、そのとき気温・生態系・植生はどう変化していくか、人間にとってどのような影響を引き起こすかなどは、まだはっきりしていません。また、回収・貯留時のエネルギー消費量が大きいなど、経済性の問題もあります。
世界のCO2排出量が増加傾向にある中、短期間に大量のCO2を処分する技術として、一時しのぎの対症療法ではありますが、CCSの有効性が高いことも事実です。これを当面の温暖化対策のひとつとして進めながら、できるだけ早急に、化石燃料に頼らない低炭素社会に転換することが、究極の温暖化対策だと考えます。
□詳しくはこちら
→独立行政法人国立環境研究所地球環境研究センター「ココが知りたい温暖化」
http://www.cger.nies.go.jp/ja/library/qa/10/10-1/qa_10-1-j.html