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日刊 温暖化新聞|温暖化FAQ
対策の考え方
温暖化を止めるためには、CO2排出量を現在の半分以下にまで減らさないといけないと聞きました。よほどGDPを下げて生活の質のレベルを落とさない限り、そんなことは無理だと思うのですが。
CO2排出の主な原因を一つずつ分解した「茅恒等式」と呼ばれる式があります。世界的によく知られるこの式を用いて検討しましょう。
CO2排出量=(CO2/エネルギー)×(エネルギー/GDP)×(GDP/人口)×人口
第1項の「CO2/エネルギー」は「炭素集約度」と呼ばれ、1単位あたりのエネルギー利用で排出されるCO2の割合を表します。化石燃料と比べてCO2をあまり排出しない再生可能エネルギーを増やしたり、CO2排出の少ないエネルギーで製造した電気や水素を効率的に利用したりすることで、大幅に改善できる可能性があります。
第2項の「エネルギー/GDP」は「エネルギー集約度」と呼ばれ、1単位あたりのGDPを生むのに必要なエネルギーの割合です。日本が得意とする省エネ技術をさらに発展させることや、IT技術などを利用した省エネ型の経済活動に転換することで、大幅に改善できる可能性があります。
第3項「GDP/人口」は「国民一人あたりが生産する経済的な付加価値」で、生産活動や消費活動が増えるほど増加します。第4項の「人口」について、国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2050年には1億人以下に減少すると予想されています。
国立環境研究所の「日本脱温暖化2050研究プロジェクト」では、一人当たりGDPが年率2%で成長しても、さまざまな対策を組み合わせることで、日本のCO2排出量を1990年比で70%削減できることが示されています。一つひとつ努力を積み重ねれば、GDPの成長と大幅な排出量削減が両立できるでしょう。
ところで、GDPは本当に「生活の質」を表しているのでしょうか? GDPはモノ(量)の豊かさを反映します。自宅で野菜を育て、家でご飯を食べるより、外食した方がGDPは増加します。犯罪が増えると、警察や家庭内セキュリティーサービスに多くのお金を使うため、GDPは増加します。「脱温暖化社会」の実現に向けて、もう一度「生活の質」の中身を問い直してみることも必要かもしれません。
□詳しくはこちら
→独立行政法人国立環境研究所地球環境研究センター「ココが知りたい温暖化」
http://www.cger.nies.go.jp/ja/library/qa/2/2-2/qa_2-2-j.html