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日刊 温暖化新聞|温暖化FAQ
対策の考え方
成長中の樹木がCO2を吸収しても、やがて枯れて朽ち果てればCO2を吐き出すことになるので、温暖化対策の植林などは一時しのぎではないのでしょうか。
植林地の生態系が植林の前後でどのように変化するか比較してみましょう。森林生態系は、樹木の成長に伴いCO2を吸収します。一方、枯れ葉や枯れ枝、枯死木は、すべてがすぐに分解されて大気中にCO2として還るのではなく、炭素を含んだ有機物として土壌に蓄積し、少しずつ分解されCO2を放出します。
伐採と植林のサイクルを数十年から数百年間のスパンで見ると、図のようになります。伐採後、森林の炭素蓄積量は一時的に減少しますが、土壌中に蓄えられた炭素は着実に増え続け、伐採と再生を繰り返す中で、全体の炭素の蓄積は徐々に増えていくことがわかります。
(図)植林の実施前後における炭素蓄積量の変化
(出典)山形与志樹, 植林による温暖化対策, ココが知りたい地球温暖化(気象ブックス026), 2009年, 国立環境研究所 地球環境研究センター編著, 成山堂書店, P139
土壌中に蓄えられる炭素は、平均的には植生中の炭素量に匹敵、あるいはそれ以上の量となります。さらに森林が成熟すると、木の成長分と土壌における有機物の分解が最終的には平衡状態になり、森林生態系としての炭素蓄積の増大はストップします。そのとき、植林前の土地にあった炭素の蓄積量と比べると、炭素ストックは着実に増えています。植林による温暖化対策の効果は、短期間に増減する炭素量ではなく、森林全体の炭素蓄積を長期的に評価する必要があります。
また、伐採された木は、材木として住宅や家具に利用され、長い間にわたって炭素を保持し続けます。残材や廃材をバイオマスエネルギーとして利用すれば、石油などから排出されるCO2排出の削減につながります。バイオマスの燃焼で排出されるCO2は、もともと森林が吸収したものなので、長い目で見ると、大気中のCO2を増大させるものではないからです。さらに伐採後に森林が再生しますから、排出されたCO2を再吸収することができます。このように、植林とバイオマス利用を進めれば、長期にわたってCO2の排出削減効果が持続するのです。
□詳しくはこちら
独立行政法人国立環境研究所地球環境研究センター「ココが知りたい温暖化」
http://www.cger.nies.go.jp/ja/library/qa/3/3-2/qa_3-2-j.html