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日刊 温暖化新聞|温暖化FAQ
温暖化のサイエンス
メタンや一酸化二窒素、フロンガスなどのほうが、二酸化炭素より温室効果がずっと大きいと聞きました。こうしたガスを先に減らすべきではありませんか。
温室効果ガスには、最も濃度の高い二酸化炭素(CO2)のほか、微量大気成分であるメタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O、亜酸化窒素ともいいます)、フロン類などハロゲン元素を含む人工ガス類があります。こうしたガスは、同じ量であっても温室効果が異なります。そこで、比較しやすいように、二酸化炭素の温室効果を「1」とした場合に、それぞれのガスの影響度を表す「地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)」が定められています。大気中の人為的な増加量とGWPをかければ、ガスごとの温室効果が計算できる仕組みです。
主な温室効果ガスについて、現在の大気濃度、大気寿命(大気中で安定的に存在している時間)、GWPを表1に示しました。GWPがとても大きいガスもありますが、産業革命以降100ppmも濃度が上がり、現在も年に1.8ppmずつ濃度が増加しているCO2にはかないません。CO2の削減をしないことには、本質的な温暖化防止にならないことがわかります。ただし、こうした微量ガスの温室効果を合わせるとCO2の半分を上回るので、やはり削減しなければなりません。
GWPの決定には、大気化学的な要素が考慮されています。例えば、CH4は対流圏の光化学反応で分解するので、比較的早く約12年で消滅します。一方N2Oは、成層圏に輸送されてから紫外線による光化学反応を受けて分解するため、消えてなくなるまでに110年以上かかります。
(表)CO2と微量温室効果ガスの濃度、大気寿命、地球温暖化係数
(出典)IPCC第4次評価報告書第1作業部会報告(第2章)より作成
これは、温室効果ガスの削減対策とどのような関係があるでしょうか。比較的寿命の短いCH4やHCFCなどの削減効果には即効性があり、寿命が長いN2O、CFC、PFC、SF6の削減は将来の温暖化を抑制する効果があることになります。今世紀中に、急激な気候変動が起こらないようにするには、CH4やHCFCなどの削減対策が効果的といえます。一方、N2O、CFC、PFC、SF6の及ぼす温暖化は長期にじわじわと表れるので、将来の気候に大きな影響があります。
海面上昇や大規模な氷床の変化は、今後何世紀にもわたる気候変動がもたらす影響ですから、今のうちに寿命の長い温室効果ガスの削減を進めなくては、将来に禍根を残すことになります。CO2の削減とともに、いずれのガス対策も急いで進めるべき重要な課題です。
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□詳しくはこちら
→独立行政法人国立環境研究所地球環境研究センター「ココが知りたい温暖化」
http://www.cger.nies.go.jp/ja/library/qa/15/15-1/qa_15-1-j.html
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