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日刊 温暖化新聞|エダヒロはこう考える

20090428

日本の中期目標を考えるために~基本的な前提と考える視点

日本の中期目標を考えるために、私が重要だと思う基本的な前提と考える視点をお伝えしたいと思います。

(1)世界のCO2排出量

「世界全体のCO2排出量は、自然体だと2050年までに現状の2倍になりますが、半分まで減らす必要がある」ことを国際社会は認めています。IPCCでは、「附属書I国(先進国)の排出量を2020年までに25~40%削減することが必要」と述べています。

世界のCO2排出量の歴史的な累積を見ると、先進国がその75%を、途上国が25%を排出してきました。単年度の排出量を比べると、2005年に先進国の排出量と途上国の排出量は逆転し、現在では先進国が半分弱、途上国が半分強となっています。2050年には、途上国が6割強、先進国が4割弱となると考えられています。

先進国は世界の排出量の半分弱を占めますが、米国が世界全体の20%、その他の先進国が30%を排出しています。米国は京都議定書に参加していないため、「附属書I国」の排出量は、世界全体の30%になります。


(2)日本のCO2排出量

世界全体の排出量のうち、日本が占める割合は現在4%です。京都議定書で日本は90年比マイナス6%の目標を掲げました。これは森林等の吸収源や排出量取引を含めての数字なので、それらを差し引くと、実質的な排出量削減の目標は90年度比-0.6%となります。しかし、実際には2005年には90年比7.7%の増加となっています。


(3)中期目標

2009年末のコペンハーゲン会議(COP15)で2013年以降の国際的な枠組みに合意すべく、国際交渉が続けられています。EU、米国はすでに、それぞれの中期目標を発表しました。EUは、90年度比-20%(2005年度比-14%)の目標です(90年~2005年の間、EU加盟国が15から27カ国に増えるなどして、EU全体の排出量が減っているためです)。米国は、2005年度比-14%(90年度比±0%)という目標です(米国は90年~2005年の間に排出量を14%増大させているからです)。


(4)日本の中期目標の6つの選択肢

選択肢には2つのグループがあります。1つは、「国内でどのような取り組みをしたら、どれぐらい減らせるか」を考えるアプローチです。もう1つは、先進国全体での公平性に着眼した選択肢です。

●選択肢1: 90年比+4%(05年比-4%)
エネルギー庁の長期需給見通しでの現状維持ケースです。既存技術の延長線上で効率を改善していくという考え方で、現状の政策(自主努力を促す効率改善の目標、トップランナー規制、補助金など)を続けるという「努力継続ケース」です。

●選択肢2:90年比+1~-5%(05年比-6~-12%)
先進国全体で90年比-25%を達成するため、「限界削減費用を均等にする」ことで先進国が公平に削減努力をするという考え方です。限界削減費用とは、「さらに削減するためにどのぐらいの追加的な費用がかかるか」で、これまでの努力を勘案するアプローチです。日本のように、すでにエネルギー効率改善などに投資をしてかなり進んでいる場合は、そうでない国に比べると限界削減費用は高くなります。(ちなみに、この場合、米国は90年比-19~-24、EUは-23~-27%の削減となります)

●選択肢3:90年比-7%(05年比-14%)
長期需給見通しでの最大導入ケースです。最高効率の機器を現実的な範囲で最大限導入するもので、現状の政策に加え、新たな太陽光発電の買取制度やエコカー購入支援補助、省エネ住宅の規制強化などによって、政策をさらに最大限強化します(補助額は年間1.2兆円)。

●選択肢4:90年比-8~-17%(05年比-13~-23%)
先進国全体で90年度比-25%を達成しますが、先進国の公平性を「GDP当たりの対策費用」で考えます。(この場合、米国は90年比-7~-18%、EUは-30~-31%の削減となります)

●選択肢5:90年比-15%(2005年比-21%)
新規に導入する機器は、すべて最高効率の機器にし、かつ、更新時期前の既存の機器も、一定割合を買い替えたり改修したりする取り組みをした場合です。

●選択肢6:90年比-25%(05年比-30%)
先進国全体で90年比-25%を達成するため、すべての国が-25%の目標とする考え方です。この削減を達成するためには、日本では、新規・既存の機器のほぼすべてを最高効率の機器にし、かつ、炭素への価格づけ(炭素税、排出量取引)によって、経済の活動量(生産量)を下げる必要があります。

選択肢は以上です。

ひとつ、補足ですが、国際的な公平性を考える場合、公平性の基準を何にするかによって、各国の必要な削減が異なってきます。これまで対策技術の導入が進んでいる日本は、「限界削減費用」を基準に用いたいという声が強いですが(特に産業界)、世界的には、この指標を前面に出しているのは日本とカナダしかないといわれており、ほかにも「一人あたりの削減量」や「GDP当たりの削減費用」など、さまざまな公平性の基準が各国から提唱されています。


(5)中期目標を考える際の重要な視点

中期目標を考える際に、重要なポイントが少なくとも3つあると考えています。

1つは、「被害が大きくならないうちに温暖化を止めるための長期目標」を実現できるよう、2020年までに、何をどこまで進めるのかを明確にすることです。住宅30年、工場20~30年、自動車10~20年と、寿命が長いものほど早期対策が大きな削減を生みます。

また、2020年で温暖化対策が終わるわけではありません。2020年後もしっかりと削減が進んでいくよう、2020年までに技術の進歩とコストの削減の勢いをつける必要があります。2020年に向けて高い目標を掲げることで早期対策・早期投資を進め、技術とコスト削減を進めることで、2020年後も大きな効果を生み続けることができます。

もう1つは、「資源・エネルギー制約の時代」になっても、日本がいきいきと幸せに繁栄していくための技術開発や社会・経済のシフトを進めることが必要であり、その後押しするための中期目標が必要です。

現在、炭素吸収源という制約から温暖化の問題が出ていますが、これからほかにもさまざまな資源・エネルギー制約の問題が出てくるでしょう。それらに個別に対応するのではなく、根本的な対応ができるよう、日本の社会や経済の形を変えていく必要があります。技術的な解決策だけではなく、ライフスタイルや産業構造の変化も必要です。中長期的な日本のあるべき姿とそのための移行に資する中期目標を設定する必要があります。
 
3つめに、国際的な協調体制をつくっていく必要があります。現在、附属書I国は、世界全体の排出量の30%を占めるにすぎません。米国や、中国をはじめとする途上国が参加する枠組みづくりが必須です(ちなみに米国は、中国・インドなどの途上国が入っていない枠組みには参加しないという姿勢を明らかにしています)。

途上国が参加するには、まず日本をはじめとする先進国がこれまでの排出に対する責任をきちんと受け止め、自らにしっかりした目標を設定することが前提条件となるでしょう。そのうえで、資金・技術の移転を進めつつ、途上国に対しても徐々に拘束力のある枠組みを設定していく必要があると考えます。


中期目標は国民の議論も踏まえて、麻生首相が6月に決めるとされており、5月16日までパブリック・コメントを募集しています。ぜひご意見を伝えて下さいな。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tikyuu/kaisai/dai07kankyo/tyuuki_iken_syousai.pdf

 
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