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日刊 温暖化新聞|エダヒロはこう考える
2010年06月02日
原発10基分!日本の洋上風力発電の可能性と取り組み
■日本の総電力における風力発電による発電量の割合は?
2008年の日本の総電力における風力発電による発電量の割合はどのくらいだと思いますか?
0.3%です。
どうしてなのかな? 「日本は狭いから」「日本は漁業権がウルサイから」等々、いつもの「日本特殊論」で片づけてしまわないで、日本独自の事情があったとしたら、そのなかでどうやってやるべきことを進めるかを考えていかないと、世界のガラパゴスに取り残された浦島太郎さんになってしまいます。
先日、温暖化対策の中長期ロードマップ小委員会のヒヤリングに来てくれた三菱重工の方が、「御社は風車を製造しているが、そのほとんどを輸出しているのはなぜか?」というような質問に、「たまたま今は海外のほうが展開しやすいからです」というように答えていらっしゃいました。企業としてはいうまでもなく、買い手がいるところに売るわけですものね。
どうやったら日本で買い手が増えるのか、現在議論中の「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」を含め、制度や仕組みの整備を急いでほしいなあと思います。
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■日本の洋上風力発電の可能性
洋上風力発電については、国土は狭いけど海岸線が長い日本には大きな可能性があると言われています。
「洋上風力エネルギー賦存量の評価」山口 敦 石原 孟
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jwe/32/2/63/_pdf/-char/ja/
この研究は、「東京湾を除く関東地方沿岸域の陸地から50kmまでの範囲を対象とし,水深別,海岸からの距離別に風力エネルギー賦存量を求めた.また,海域によっては社会的,経済的な理由により大規模洋上ウィンドファームの建設が現実的でない海域も存在するため,数種類のシナリオを想定し,社会的制約条件および経済的制約条件を考慮した賦存量を推定した」もので、条件や計算等の詳細は上記ファイルをみていただくとして、以下の結論が書かれています。
●海岸からの距離50kmまでの全海域を対象とした場合に,風力エネルギー賦存量は年間287TWhとなり,2005年の東京電力の年間電力販売量とほぼ等しい.
●浮体式基礎を含めた場合,賦存量は大きく増大し,設備利用率が30%以上となる海域を対象とした場合,最も厳しい社会的制約条件を課したシナリオでも賦存量は100.59TWh/year に達する.また,この場合,水深20~200m,海岸からの距離10~30km までの海域に,東京電力の年間電力販売量の14%に相当する39.32TWh/yearの賦存量が存在する
潜在可能性はとても大きく、現実的な見積としての社会的制約条件を課したシナリオでも、フローティング式(海底に足場を置かず、風車を海に浮かべる方式)の技術が実用化できれば、大きな可能性があることがわかります。
数年後には、……「東京電力の販売する電力の7分の1は、風力発電なんですよ」ってね!
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■原発10基分! 日本の洋上風力発電への取り組み、追い風ビュンビュンです~
最近のニュースからいくつかご紹介します。
●政府の総合海洋政策本部(本部長・鳩山由紀夫首相)が検討している「海洋再生可能エネルギー戦略」素案が明らかになった。
海洋に風力発電設備を設け、2020年までに原子力発電所10基分にほぼ相当する1千万キロワット以上の電力を生み出す。直径120メートルの大型風車が2千基以上稼働する計算だ。
波力や潮流を使ったエネルギー技術も開発。12年から実施し、温室効果ガス削減や沿岸部振興につなげる。
洋上風力発電の普及には大型風車の開発や、工事用の特殊船舶の建造などが必要とされ、鉄鋼、機械、造船といった産業への波及効果も大きい。政府は6月に策定する成長戦略に、洋上発電の支援を盛り込む考えだ。
洋上発電は陸上で問題になっている風車の低周波音や騒音の被害を避けられる。ただ陸上に比べ設置費用がかさみ、地震や台風への対策や、安定稼働のための技術開発が課題とされる。周辺海域で操業する漁業者との権利調整も必要だ。
国内では現在、北海道せたな町などで14基が稼働しているが、発電量は計1万1千キロワット程度で、200万キロワット超の欧州に比べ普及が遅れている。
●環境省は2012年度末にも、風車を海に浮かべて発電した電気を海底ケーブルで地上に送る「浮体式」洋上風力発電の実証試験を始める。
浮体式は水深が50メートルを超える海域に設置できる。深い海域にも設置できるので、風車の土台を海底に固定する「着床式」に比べ導入可能な場所が5倍以上に増える。14年度まで実験し、発電や送電の性能、耐久性、海洋生物への影響などを調べる。 浮体式は各国が技術開発中。 日本風力発電協会では浮体式の普及が見込める50年度には風力発電による電力供給量が国内全需要の1割を占めるとみている。
●東京電力、銚子市南沖合の洋上に風況観測タワーに続いて風力発電設備を設置 東電はNEDOとの共同研究事業として、千葉県銚子市の南沖合約3kmの洋上に着ローター直径約90mの床式風力発電設備を設置し、洋上風力発電に関する運転保守方法の確立や、発電システムの設計指針作成などに向けた「洋上風力発電システム実証研究を6月を目途に開始する。
日本近海の厳しい自然環境に適した設計・施工方法や運転保守方法などを確立するとともに、洋上の風力発電設備が環境に与える影響について調査を行うもので、洋上風力発電の実用化に向けた次なるステップとなる。
楽しみですね~! 洋上での技術開発だけじゃなくて、陸上での制度の整備も進めなくちゃ!ですね。