本文の先頭です。
日刊 温暖化新聞|エダヒロはこう考える
2009年05月28日
日本がデンマークやノルウェー並みに自然エネルギーで発電していたら?
温暖化対策の中でも、燃料の燃焼に伴うCO2を減らせるかどうかが鍵です。発電に関わる燃料燃焼のCO2を減らすための大きな切り札が「自然エネルギー」です。
しかし、日本の総発電電力量に占める自然エネルギーによる発電は10%前後しかありません。
デンマークは、その割合を3%(1990)から28%(2005)へと大きく引き上げています。また、ノルウェーは水力発電で約9割を発電し、残りの1割はバイオマス発電や廃棄物発電を活用し、いち早く「CO2ゼロ」の発電を実現しています。
「もし日本の発電に占める自然エネルギーの割合をデンマーク並みに引き上げられたら、過程からのCO2排出量はどのくらい減るのだろう? 究極の理想として、ノルウェーのようになれたら、どうなのだろう?」と思って、昨年でしたが、専門家に尋ねてみました。
そのときにいただいた回答を引用します。日本の温室効果ガスの排出量を減らすために、何が有効なのか、よくわかると思います!(注:数字等は昨年の段階のものです)
~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~
総発電電力量に占める再生可能エネルギー由来の発電電力量の割合が諸外国並だったと仮定した場合の我が国の家庭部門のCO2排出量
○2005年度における家庭部門からの温室効果ガス排出量は1億7,400万トンとなっており、基準年である1990年度の1億2,700万トンに比べて36.7%増となっている。
○また、日本は再生可能エネルギーの普及が電力需要の伸びに比べて小さかったこと、2005年度は小雨年で水力発電による発電電力量が少なかったことが原因となり、IEAのデータによれば、総発電電力量に占める再生可能エネルギー由来の発電電力量の割合が1990年度の12%から9%に減少している。
○他方で、欧州のデンマークやドイツの国では地域特性を活かした再生可能エネルギーの利用や政策効果により総発電電力量に占める再生可能エネルギー由来の発電電力量の割合を高めることに成功している。
デンマーク(3%(1990)→28%(2005))
ドイツ (3%(1990)→10%(2005))
○また、ノルウェーは水力発電(約9割。残りの1割はバイオマス発電や廃棄物発電)を活用し、いち早く「ゼロ・エミッション電源」を実現している。
ノルウェー(99.8%(1990)→99.5%(2005))
○ここで、我が国の2005年度における家庭部門からのCO2排出量は、電力に起因するものが1億600万トンと約6割、電力以外(LNG、LPG、灯油等)に起因するものが6,800万トンと約4割を占めている。
○総発電電力量に占める再生可能エネルギー由来の発電電力量の割合が(1)仮に1990年度と同様の12%だったとした場合、(2)デンマーク並みの28%だったとした場合、(3)ノルウェー並みの100%だったとした場合の2005年度の家庭部門からのCO2排出量は概算で、
(1)1億6,900万トン(05年度実績比で3%減、基準年(90年度)比で33%増)
(2)1億3,700万トン(05年度実績比で21%減、基準年(90年度)比で8%増)
→これは京都議定書目標達成計画における2010年度の家庭部門のCO2排出量の目安である1億3,800万トン~1億4,100万トンにほぼ等しい。
(3)6,800万トン(05年度実績比で61%減、基準年(90年度)比で47%減)
→これは福田ビジョンの長期目標である現状から60~80%削減を達成している。
~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~
誤解をおそれずに言えば、家庭部門では省エネを全くしなくとも、電力を化石燃料由来の電力から再生可能エネルギー由来の電力に変更するだけで、京都議定書も福田ビジョンも達成することができるのです! それほど自然エネルギーによる発電を普及することは重要であり、とても効果的な温暖化対策なのです。
スウェーデンに取材に行ったときも、もちろん市民は意識を持って各自ができることに取り組んでいましたが、日本のように「国民のライフスタイルを変えるしか減らす方法はない!」という感じではなく、行政の担当者も「実は、電力消費量はほとんど変わっていませんが、CO2はがくっと減っているのですよ。なぜなら電源を再生可能エネルギーに替えているからです」とのことでした。
家庭の電力消費からのCO2=電力消費量×その電力を1kwh発電するときに出るCO2
ですから、日本でこれまで力を入れてきた「家庭での消費電力を減らす」取り組みだけでは十分ではありません。
日本では近年、自然エネルギーへの切り替えを進めるどころか、化石燃料の中でも石炭火力発電が増えてきています。米国などでは石炭火力発電を禁止しよう、閉鎖しようという動きもある中で、増やしている先進国は日本だけだそうです。
電力自体のCO2が増えていくとしたら、どんなに必死になってこまめに省エネをしても、家庭からのCO2は減っていかないでしょう。
私たち市民は、家庭でできる省エネを進めつつ、電力のグリーン化を進めていくことです。日本ではまだ電力が選べませんから(海外には「うちは風力発電の電力をちょうだい」など選べるやり方もあるのですが……)、地元の電力会社に「お宅の電力は、どのくらいCO2を出すやり方で発電しているの? それを減らしてくれない? そうしないとうちのCO2が減らないもの」と声を伝えましょう。
市民風車や市民共同発電所など、市民のお金で日本の電力のグリーン化を進める動きもありますから、支援・参加を考えてみて下さい。