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日刊 温暖化新聞|エダヒロはこう考える
2009年08月10日
「ピークオイル」は予想より早くやってくる!
■「ピークオイル」をご存じですか?
「ピークオイル」とは、石油の生産量がピークに達して、そこからは減っていくというタイミングのことで、そのあとは石油の価格は(需要は増える一方なのに、供給は減るわけですから)どんどん上がっていくだろうと考えられています。
欧米ではピークオイルがいつくるか、どう対処するかという議論が数年前からとても盛んなのに、日本では企業向けの講演会で「ピークオイルって聞いたことのある方?」と聞いても、ちらほらしか手が挙がらないぐらい、まだ知られていません。知らないわけですから、当然ながら、危機感もありません。。。
メールニュースのアーカイブに「エネルギー危機」というカテゴリーを設けており、ピークオイルの議論や、どうそれに対処すべきか、に関するメールニュースを集めてありますので、よかったらご参考まで。
http://www.es-inc.jp/lib/archives/12.html
■「ピークオイル」は予想より早くやってくる!
さて、8月3日付の英インディペンデント紙に、IEA(国際エネルギー機関)
のチーフエコノミストへのインタビューが載っています。
Warning: Oil supplies are running out fast
「警告:石油の供給は急速に枯渇しつつある」というタイトルのこのインタビューでは、「世界の埋蔵量の4分の3を占める800の油田を調べたところ、主要な油田のほとんどでは、すでに産油量がピークを過ぎており、世界全体の産油量も10年以内にはピークに達するだろう」とのこと。これは、多くの政府の予想より10年も早いものです。
今の私たちの暮らしも産業も石油に大きく依存しているため、このピークオイルは破局的なエネルギー危機を引き起こし、グローバル経済の回復の足を大きく引っぱるだろう、とのこと。
「We have to leave oil before oil leaves us.」という、IEAチーフエコノミストのビロル博士のとても印象的な言葉があります。
「今日明日とは言わないが、ある日、石油はなくなる時がくる。石油が私たちから去る前に、私たちが石油から離れなくてはならない。その移行は早く始めれば始めるほどよい。なぜなら、現在の経済・社会システムはすべて石油を基盤としているから、それを変えていくためには、大変な時間と資金が必要だからだ。この問題は本当に真剣に考えなくてはならない」
「産油国の市場支配力はこれからも急速に拡大するだろう。そして、現在の油田の産油量の低下を補うような新規開発が行われていないので、来年以降世界の景気が回復に向かい、需要が戻ってくれば、石油危機が生じるリスクが現実的にありうる」
IEAでは、2007年(わずか2年前!)に、現在の油田の産油量の減少率は年3.7%と予測していましたが、実際は年6.7%で、前の予測は間違っていたと認めています。
「もし需要が変わらないとしても、必要な生産量を維持するにはサウジアラビア4つ分の石油が必要だ。もし、今から2030年までに予測されている需要の増加を満たそうと思うなら、サウジアラビア6つ分の石油が必要になる」とのこと。
在来型石油(いわゆる石油)がなくなってくると、カナダのタールサンド(極めて粘性の高い鉱物油分を含む砂岩)などの非在来型石油を採掘し、精製して石油を得るという動きが大きくなるでしょう。
しかし、このプロセスは大きなエネルギーを必要とするため、エネルギー回収率(投入するエネルギーに対して、どのくらいのエネルギーが得られるか)はとても悪い上、CO2も大量に出てしまいます。「ピークオイルに対する態勢を十分に整えておかなければ、温暖化問題は予想以上に悪化してしまうだろう」とのこと。
「再生可能エネルギーへの移行を進め、同時に、省エネ・エネルギー効率のアップを進める必要」が、単に温暖化対策としてだけではなく、ピークオイル対策としても緊急の課題であることがわかります。
これからあちこちで、このような「予想よりも石油が足りなくなる時期が早く来る」という情報が出てくるだろうと思っています。「だいじょうぶさ、石油に任しておけ!」と言っていた諸機関が、少しずつスタンスを変え、最後には「ほーら、言ったでしょう? 私たちは警告していましたよ」と言えるように。。。
「各国政府は、いつか安くて簡単に手に入る石油はなくなるかもしれないと認識はしはじめているようだが、どれほどの困難に直面することになるかはわかっていないのではないか」とビロル博士。
うーん、日本も本格的に「脱石油」を考えているようには思えません。スウェーデンのように、数年前から「2020年には石油を使わない国になる」と宣言して、着々と進めているところとは、大きな差が出てくることでしょう。
でも、思い立ったが吉日、そうかと思った日が吉日なのですから、一刻も早く本格的な「脱石油国家」に向かって取り組みを始めてもらわなくては。
■来る石油ショックから自分と家族、会社・地域を守るために
といっても、国が動くまで待っている必要はありません(それでは手遅れになる危険性もけっこうあります)。政府をプッシュしながらも、自分や家族、会社や地域の「自分たちの身は自分たちで守る」取り組みを進めましょう。
そのためのヒントときっかけになれば、との思いで書いた本を、もう一度ご紹介させて下さい。
『エネルギー危機からの脱出 ―最新データと成功事例で探る"幸せ最大、エネルギー最小"社会への戦略』(ソフトバンククリエイティブ)
エネルギー危機が、目の前に迫っています。「ガソリン価格が上がった」という目の前のことだけでなく、その問題を起こしている構造と、新しいエネルギー源をベースにした未来を考えることで、ピンチをチャンスに変えましょう。この1冊で、世界と日本のエネルギーの現状と問題構造を理解し、世界の先進事例を知り、具体的な解決策や自分たちがとるべき行動のヒントを考えていただけます。ぜひ、ご一読ください。
ご家族やお友だち、会社の方などにもぜひ読んでもらって、いっしょに考えてもらえたら、と願っています。