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日刊 温暖化新聞|エダヒロはこう考える

20101203

国家戦略室「主要3施策に関するヒアリング」での発言録

前々号でお知らせしたように、現在、議論中の温暖化対策の「3点セット」
・環境税
・国内排出量取引制度
・再生可能 エネルギー全量買い取り制度
の年末のとりまとめをめざして、国家戦略室が11月18~19日の2日間、関係団体や有識者のヒアリングを実施しました。招聘されたのは以下の方々です。

18日
【有識者】
・諸富 徹  京都大学大学院経済学研究科 教授
・大塚 直  早稲田大学大学院法務研究科 教授
・澤 昭裕  日本経済団体連合会/21世紀政策研究所 研究主幹
【労働団体】
・逢見 直人 日本労働組合総連合会 副事務局長
【NGO】
・浅岡 美恵 気候ネットワーク 代表

19日
【経済団体】
・坂根 正弘 日本経済団体連合会 副会長、環境安全委員会委員長
(小松製作所取締役会長)
・鳥原 光憲 日本商工会議所 特別顧問、環境専門委員会共同委員長
(東京ガス取締役会長)
・浦野 光人 経済同友会 低炭素社会づくり委員会委員長
(ニチレイ取締役会長)
【消費者代表】
・崎田 裕子 ジャーナリスト・環境カウンセラー
・枝廣 淳子 ジャパン・フォー・サスティナビリティ代表

資料等が今日アップされましたので、自分の発言録をお届けします。
私の資料はこちらです。
http://www.npu.go.jp/policy/policy07/pdf/20101203_02/siryou9.pdf

~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~~

今日はこのような機会をいただき、本当にありがとうございます。

今ご紹介いただいたNGOは、日本の環境情報を世界に発信するというNGOで、8年ほどやっておりますが、世界からのフィードバックを見ても、やはり途上国も先進国も、日本の技術に対する期待はすごく高いと、いつも思っています。NGOのほか、市民と企業、行政をつなぐような活動をふだんしております。

2ページですが、今、中長期ロードマップの小委員会で、コミュニケーション・マーケティング・ワーキングというワーキングの座長をしております。これは、先ほど浦野さんからもお話がありましたが、どのように伝えていくのかというのが1つ。それから、どのように国民の実態や声を反映した形で施策を作るのかと。そのあたりの取り組みを今、ヒヤリングをやったり1,000人規模のアンケートを行ったりしてやっています。

その中のいくつかの意見をここに拾ってきましたが、国民が政府に求めている大きなポイントは、「腰を据えてしっかり打ち出して、ぶれずに進んでください」ということです。やはり、それがないと国民も、企業も同じですが、どうしていいかわからないということだと思います。

3ページは、言うまでもないですが、細かい制度論とか局所的な見方ではなくて、個別最適化ではなくて、全体を国家戦略としてどう考えるかということだと思っています。

単に細かい制度論ではなくて、国家戦略と考えたときに、4ページにありますように、今、日本が直面している2つの問題――1つは世界経済における日本の地位の低下。先ほど、坂根さんもお話しになっていたことと重なる部分があると思います。それから、この間、IEAから「ピークオイルは2006年だった」という発表もありましたが、右肩上がりの化石エネルギーの価格。これをどういうふうに考えていくのかということです。

5ページは、ゴールドマン・サックスの資料ですが、今、欧米のコンサルタントの間では、日本は“Newly Declining Country”と呼ばれたりしているそうで、「新興衰退国」というありがたくない名前です。しかもこれを紹介しているコンサルタントの方が、CountriesじゃなくてCountryと、1国になっているというこ
とを怒っていましたが、しかしそういう見方をされるような位置づけになっているということです。

ですから温暖化対策をするときに、これをそのままにしていいわけはなくて、これをどのように盛り返すかということと当然重ねて、温暖化対策も考える必要があると思っています。

6ページは、もう1つの問題だと思っています化石エネルギーの割合です。言うまでもないですが、日本は非常に化石エネルギーの依存率が高い上に、ピークオイルがもうすでに来たという話もあり、少なくともこれから値段は右肩上がりで上がっていくであろうということになります。

7ページにありますのは、これまでの日本の化石エネルギーの輸入額です。98年には5兆円だったものが、2008年には23兆まで増えている。一番下は、長期エネルギー需給見通しですが、このままいくと、2倍、3倍と増えていくだろうと。これが今の日本の経済状況、もしくは財政を考えたときに、どういったことが意味されるのかということです。

そういったことをいろいろ考えた上で、8ページ。どのように持続可能な日本になっていくのか、というのが一番大事なポイントではないかと思っています。資源やエネルギーは減っていくし、CO2も出しにくくなる。日本は人口も減って、市場は小さくなっていく。一方、世界の人口やさまざまな競争、環境コストは大きくなっていくと。

つまり、この細いところをどうきちっと見つめて、突き抜けていくかというのが、今回の3施策を含め、国家戦略として作っていく部分ではないかと思います。

こういう問題のときに、たとえば産業界の方のお話とか、私のように市民の立場のお話、いろいろ聞かれると思うんですが、決定的なポイントは時間軸の違いだと思っています。やはり、現状を守る、割と短期的なことを守るのがお仕事の方々もいらっしゃいます。実際に、国がどういう時間軸でこの問題を考えるのかが、今、問われていると思います。

それぞれの立場はそれぞれの時間軸があって、その人はその時間軸でもちろん話をするわけですが、成長戦略といったときに、今までのままの20世紀型の成長を考えているのか、それとも新しい時代の、たとえば炭素、それから資源、エネルギーの制約が厳しくなる、そういった新しい世界での新しい経済成長を考えているのか。それもやはり時間軸の違いではないかと思っています。

当然、短期的な痛みを受けるダメージの大きなところには手当は必要ですが、それが恐ろしいからといって何もしないというのは、もうオプションではないのではないかと。きちんと行く末を見据えた上で大胆な施策を取っていかないと、何もしなくても先細りですから、この細いところをどうやって通っていくのかというのが、今回の戦略として必要なところではないかと思います。

いろいろな人、市民と話をしていても、「結局、いろいろな施策をやる、やらないと言っているけれど、日本をどういう国にしたいのかがわからない」と。その不安感が非常に大きいです。

9ページは、そういった意味でのバックキャスティングです。「2050年何%」と言う前に、2050年にどういう社会にしたいんだと。そのとき人々はどういう暮らしをして、エネルギーはどうなっていて、モノの循環はどうなっていて、食糧はどうなっているのか。そういった大きなグランドデザインをみんな求めていると思います。

たとえば、2005年にスウェーデンが、「15年後の2020年には石油を1滴も使わない国になる」という宣言を出して、そちらに今、進んでいます。そのような非常にわかりやすい、誰も反対しない、「やっぱり、それが正しい答えだよね」と思うような、それを実際どうやるかというのは次に考えるとしても、やはりそれだけの時間軸で大きなグランドデザインを出した上で、それを実行するための3施策という位置づけではないかと思います。

次の10ページですが、25%がどうなるかという話が先ほどもありましたし、これはどこで話を聞いてもわからないわけですが、やはり制度設計するには目標を定めないと。何に向かっての制度かというので、税率やいろいろなことが変わってくるわけですから。

ですから、たとえばEUがやっているように、「20%は絶対やる。みんながやるんだったら30%やる」というような形であってもいいので、まず25%のうち真水でどれぐらいと決める。そのためのこの3施策をどのように設計する、ということをやる必要があるんじゃないかと思います。

企業の方と話をしていても、自治体・NGO・市民と話をしていても、「それが決まらないので、どうしていいかわからない」と。ほんとに止まってしまっている。日本中が止まってしまっている状況ではないかなと思っています。 

11ページは言わずもがなですが、「温暖化対策のための温暖化対策」というよりも、下に書いてある、先ほどの連立方程式というのはいい言葉だなと思いましたが、こういったことを上手に、共通解として求めていく必要があると思っています。

12ページは、言うまでもないですが、対象と目的がそれぞれ違うわけで、恐らく総力戦でやっていかないといけない。国民も負担をしながら、自分たちでもやっていこうということになっていくと思います。そのときに、やはり産業界が大きく排出しているわけなので、「自主的に自分たちでできる範囲でやります」というのでは、きっと許されないだろうと思っています。

先ほど坂根さんが「2009年のあれだけの経済ダメージで、やっと90年比±0だった」という話をされていました。ほんとにそうだと思うんですね。今のままのエネルギー構造が変わらなかったら、きっとこの先も同じだと思います。ですから、どうやってそこを変えていくのかというところで、大きな対策を打っていく必要があると思っています。

経済界の方といろいろお話をしていても、「3施策ともどれも反対」という意見が強いように聞こえるんですが、じゃあ、今のまま何も手を打たないで活路が開けるかと言うと、おそらく開けないだろうと思います。このままどんどんといろいろな制約が厳しい世界に入っていきますので、何もしないで座して衰弱死を待つのか、というオプションになってしまうのではないかと思っています。

残念ながら、ほかの国で起こっているグリーン・イノベーションですら、技術を持っている日本がそれを日本の利益にできていないという、その現状をどうやって日本の制度、仕組みで変えていけるのか。それをしないと、産業界も、ほんとにいい技術を持っているのに、それが日本のためになっていないというのは、非常に残念ではないかと思っています。

あと少し、3施策、細かいところですが、税金については、市民向けは、値札が変わると人の行動は変わりますので、そういった意味で言うと、アナウンス効果的なものは必要だと思います。ただ、産業界向けには、実質のコストに差がついて初めて行動が変わりますので、そういった形で、炭素の含有量に合わせた形の税金になっていくと思います。

そして、今回どうするかだけではなくて、最終的に税金としてどうあるべきか、というのをまず政府として出していただいて、そのために、そこに一足飛びには行けないから、「今回はまずここまでやります」というような段階をロードマップで出す。最終的に何が正しい姿だと思っているのかということを、まず出していただきたいと思っています。

14ページはよく知られた話ですが、スウェーデンが石油を減らしてバイオ燃料――これは地域の暖房の話ですけれど、この燃料シフトは、別に人々の意識啓発をして変わったわけではなくて、税金にゲタを履かせることによって、価格差をつけたから行動が変わったということです。こういったことをやっていく必要があるだろうと思っています。

6ページ、固定価格買取制度。これもやはり、2050年のエネルギーをどうしたいのかと。先ほど、エネルギー構造が変わらなかったら同じだという話をしましたが、そういったことを先に出して、その上での今回の制度になると思います。

その次のページ、2ページは、アンケートの中で太陽光発電を導入した、もしくは導入していない理由というのがありますが、17ページのほうにあるように、「今後値段が安くなると思って買っていない」という人が結構います。ですから、固定価格買取制度の1つの役割として、先に買った人が得する仕組み。価格が下がっていきますので。それをきちんと打ち出すことが、今の需要を喚起する大きなポイントかなと思っています。

次のページは排出量取引ですが、これは、「欧米がやっているからやるべきだ」とか言うつもりはまったくなく、日本に合った日本型の仕組みを作っていく必要があると思いますが、それでも必要な削減をきちんと行うためにはどうしたらいいか、ということだと思います。

ボトムアップにしても、ルールがきちんとできるのか、透明性はどう確保できるのか。今のままだと、国内外の理解は得られないと思っています。そのあたりをきちんと制度化できるかどうかではないかと思います。

あと、「国民が負担を嫌がるから」ということを、よく皆さん言われますが、これは、何を伝えるかによって変わってきます。今の負担がいくらかではなくて、それをやったら、あとどうなるか。やらなかったらどうなるか。そういったことをきちんとコミュニケーションする必要があると思っています。

その1つの例として、21ページに、去年私がやった、一般の主婦向けのアンケート調査ですが、きちんと説明すれば、選ぶものが変わってくるという1つの実例であります。

最後2つのページは、施策がすぐにいい効果につながれば、それは誰でもやりたいものですけれども、大体今残っている問題は難しい問題で、本当に長期的に解決するには、短期的に悪化するかもしれない。しかし、今それを嫌がって何もやらないと、結局墜落していくということだと思います。

ですから、国民もこれを理解する必要があるし、こういった施策を支持する必要があります。と同時に、国のリーダーシップとして、やはり長期的に何を作り出したいと思っているのか。これをきちんと伝えていく必要があると思っています。

最後に1つ、このようなヒヤリングのときにいつも思うんですが、今の利益が大事で、温暖化の被害をほとんど受けないような世代だけではなくて、やはりこれからの、温暖化の被害が大きくなったときに生きていかないといけない若い世代――大学生とか、若い世代をぜひこういう場に呼んで、話を聞いていただきたいと思います。

以上です。

~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~

最後に述べた「若者の声を聞け」というのは、本当にそう思います。国や産業界や有識者といわれる、現在の政策を作ったり影響を与えている人たちは、そのほとんどが「ロンドン橋が落ちる前にあちら側に渡ってしまえる」人たちで、2050年にこの世で温暖化の影響を受けているわけではないのです。

「自分たちはその2050年に生きていて、今日の決断や政策の影響を受けるのです。自分たちに決めさせて下さい」--という若者の声が、もっともっと大きくなり、既得権益や現状維持にしがみつく大人たちよりも大きな影響力を持つようになれば、、、と心から願っています。


余談ですが、私は人生のピークを90代に持っていく計画なので、2050年には生きている予定です。「2010年にはだれがこんなことを言って、こんなことを決めた(または決めなかった)んだよ」とその時代の人たちに教えてあげようと思っています。

ってことをこの間、ある人に言ったら、「エダヒロサンだったら2100年にも生きていそう!」ですって。それじゃお化けですよね~。(^^;;;;

 
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