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日刊 温暖化新聞|温暖化BASIC
温暖化のしくみ
私たちの地球は、太陽系の中でも特別な命の星です。全地球の平均で15℃ぐらいという気温のため、私たち人間もほかの動植物も生きることができるのです。
地球は、火星と金星の間に位置しています。火星は、地球の隣の惑星ですが、温度が低くすぎて命が生きられません。反対側の隣にあるのは金星ですが、金星は400℃~500℃という温度だと言われます。水もすぐ蒸発してしまいますし、命も存在していないといわれています。
私たちの地球が「命の星」であるのは、たまたま太陽からの距離がちょうどよかったという理由のほかに、地球の温度をちょうどよく保ってくれている仕組みがあるためです。
図を見てください。太陽から地球に太陽光線が届きます。地表はその太陽光線を吸収し、赤外線を放出します。地表から放出された赤外線がそのまま全部宇宙に出ていってしまうと、寒い星になってしまうのですが、ありがたいことに、地球の大気には赤外線を一部閉じ込めてくれる温室効果ガスがあります。
ちょうどビニールハウスのビニールのように、入ってくる光は通すのですが、出て行く熱の一部を逃がさないのですね。それで、この膜をつくっている気体を「温室効果ガス」と呼びます。この温室効果ガスのおかげで、地球は平均して15℃ぐらいというちょうどよい気温になっているのです。
火星はどうなのでしょうか? 火星には、この温室効果ガスがほとんどありません。ですから、地表に入ってきた太陽光線をほぼすべて宇宙に向けて放出してしまいます。ですから、とても温度の低い冷たい星なのです。
では、金星はどうなのでしょう? 金星には逆に、温室効果ガスがありすぎるのですね。ビニールハウスのビニールが何枚も重なって厚くなっているようすを想像してください。これでは、地表から放出された赤外線がなかなか外に出ていけません。ですから、400〜500℃という、とても熱い星なのです。
地球は、たまたま太陽からの距離がちょうどよかった。そして、たまたま温室効果ガスの量がちょうどいいのですね。温室効果ガスは、なくても困りますし、ありすぎても困るのです。地球の温室効果ガスの量はちょうどよいから、いまのように私たちが生きられるちょうどよい気温になっているのです。
ところが、いま問題になっているのは、この温室効果ガスが増えつつあることです。ビニールハウスのビニールが少しずつ厚くなっていく状態です。としたら、ビニールハウスの中はどんどん暑くなるように、地球全体の平均気温が上がっている——これが「温暖化」です。
温室効果ガスとは?
温室効果ガスとは、どのようなガスなのでしょうか? これは1つの気体ではなく、数種類あります。京都議定書では削減対象として、二酸化炭素、メタン、CFC(フロン)など6種類の温室効果ガスが定められています。
この6種類の内訳が円グラフになっています。今までに人間によりもたらされた温暖化の原因のうち、全体の60%を占めているのが二酸化炭素です。産業革命が始まってから、人間は石炭を掘り、石油を掘り、天然ガスを堀り出すようになり、そうやって掘り出した化石燃料を燃やすことで、二酸化炭素を大気中に出し、その結果、温暖化が起こっています。ですから「温暖化」というと、「二酸化炭素を減らそう」とくるのですね。
温暖化の影響
温暖化が進むと、気温が上がります。気温が上がると、ほかにもさまざまな影響が出てきます。
ひとつには、ハリケーンや台風が強大化すると心配されています。温暖化によって気温が上昇すると、海水の温度も上がります。ハリケーンや台風のエネルギーの元は、この海から供給される水蒸気ですから、海水の温度が上がると、エネルギーがたくさん供給されるようになります。つまり、温暖化すると、ハリケーンや台風の力が強くなります。
また、温度が上がると氷が溶けます。実際に北極、グリーンランド、山岳氷河の氷が溶け出しているという報告があちこちから出されています。南極は少しくらい温暖化しても、氷が溶ける0℃よりも寒いところがほとんどのはずですが、それでも氷が海にすべり落ちる速さが速くなることにより氷が減っているという報告があります。こういった場所の氷が減ると、どのような影響があるのでしょうか。
ひとつは、ホッキョクグマをはじめとする、その地域に住む動植物の受難です。ホッキョクグマは北極の氷の上で暮らし、氷から氷へと泳いで移動するそうです。その氷が溶けてしまっているので、ホッキョクグマが次の氷まで泳ごうと思っても、50キロも60キロも先にしか氷がない、という状況が出てきているそうです。ホッキョクグマはそんなに泳げません。途中で力尽きて溺れ死んでしまうホッキョクグマがいるそうです。
ヒマラヤの氷河の氷もどんどん溶け、氷河が小さくなっています。氷河の氷が溶けると、どうなるのでしょうか? 氷河の氷は、山に降った雪が少しずつ氷になり、下のほうから溶けて川の水となります。アジアには、ヒマラヤ山脈の氷河を源流とする大河がたくさんあり、数十億人に飲み水や農業用水を提供しています。
その氷河が、気温の上昇に伴って、かつてないスピードで溶けています。すると、氷河の溶け水で氷河湖という湖ができ、やがてそれが決壊してしまいます。下流では洪水となって、村が流されたり、人が命を落としたりということがたくさん起こっているそうです。
こうして、氷が溶けて氷河がなくなってしまったら、どうなるのでしょう。氷河の氷は、いってみれば、「山の上にある貯水池」です。それがからっぽになってしまうと、雨の少ない乾季に川を流れる水が減ってしまいます。すると、ヒマラヤ山脈の河川の下流に住んでいる数十億人は水不足に直面することになります。農業用水も不足すれば、農作物の収穫量も減ってしまうでしょう。
さらに温暖化の影響として、温度が上がって、南極やグリーンランドや山岳氷河の氷が減ると、海に流れ込み、海の水を増やします。北極は、海に浮かんでいる氷です。もともと海に浮かんでいる氷なので、北極の氷が溶けても海の水は増えません。でも、南極やグリーンランドや山岳氷河は陸地の上に載っている氷ですから、その氷が減ると、海に流れ込み、海の水が増えてしまいます。
加えて、水温が上昇すると水は膨張しますから、温暖化の影響で海水が膨張しています。この2つが原因となって、海水面が上がってきています。世界平均の海水面は、この100年間に17センチ上昇したと報告されています。
海水面が上がるとどうなるのでしょうか。このまま温暖化が進むと、日本の砂浜の半分以上は水に沈んでしまうといわれています。砂浜での海水浴はできなくなってしまいます。
海水浴ができなくなるのも困りますが、国自体が危なくなっている所もあります。ツバルという小さな国の話を聞いたことがあるかもしれません。太平洋には、山もないとても平らな島国がたくさんあります。とても平らな島なので、海水面が上がってくると、その影響がすぐに出ます。海岸沿いのヤシの木が、根元を洗われて、倒れてしまう。木が倒れてしまうと、これまで根っこで抑えていた土が、抑える力を失ってますます海に流れ出してしまいます。島が消えてしまうかもしれない……そんな恐れすらあるのです。
他にも、温暖化によって、日本でもマラリアやデング熱といった南方の伝染病が蔓延するのではないか、と心配されています。
すでに、かつては南洋にしか生えていなかった木が、最近九州に上陸し、中国地方にも広がっているとか、かつては本州にしかいなかった虫がいまは北海道でも広がっているなど、温暖化による気温上昇に伴って、動植物の生育域が北へと広がりつつある状況が各地で見られています。