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日刊 温暖化新聞|温暖化BASIC
今後の気温の上昇パターンは?
これからも、二酸化炭素など温室効果ガスの排出量が減らない限り、地球の気温は上昇を続けてしまいますが、どのようなパターンで上昇すると思っていますか? 右にあるグラフ枠に、今後の温度上昇のラインを書き入れてみてください。
温暖化による気温上昇に大きな影響を与えると考えられているのが、「自己強化型フィードバックループ(ポジティブ・フィードバックループ)」といわれるものです。「自己強化型フィードバックループ」とは文字どおり、自己強化(外からの力がなくても、それ自体の力で)のしくみで、どんどんとある方向に向かう構造です。私たちがよくいう「好循環」や「悪循環」は、この自己強化型フィードバックループなのです。それでは温暖化の気候システムに存在する自己強化型フィードバックループとはどのようなものでしょうか?
温暖化の気温上昇を示すシミュレーションでは、北極やヒマラヤの氷河のあたりの温度が他の場所に比べて、急激に上昇するようすが現れています。ここで働くと考えられている自己強化型フィードバックループを説明しましょう。
温暖化によって氷が溶けていくにつれ、氷の白い地表が減って、黒い地面や黒い海が現れます。そうすると、太陽光が入ってきたときにどうなるかを考えてみましょう。
太陽光が入ってきたときに、氷や雪といった白い地表だと、太陽光の7割ほどは反射してはね返します。ところが、雪が溶けて黒い地表が出てくると、同じように太陽光線が入ったときに、反射しません。太陽熱を吸収してしまいます。すると、そこの温度が上がりますから、ますますその周りの氷が溶けることになります。すると、ますます黒い地表が広がりますから、ますます太陽熱を吸収することになり……
この「ますます」という悪循環が、「アルベド効果」と呼ばれる自己強化型フィードバックです(アルベドとは反射率のことです)。この悪循環にスイッチが入ってしまうと、最初に白い地表の広がっている北極やヒマラヤの氷河などでは、温度上昇が加速度的に進む恐れがあるのですが、すでにスイッチが入っていると考えられています。
他にもある、温暖化の悪循環パターン
温暖化の構造には、ほかにも悪循環(自己強化型フィードバック)があります。温度が上がると、シベリアのあたりに1万年ぐらい前からずっと凍っている広大な永久凍土が溶け始めます。その凍った地面の中にメタンガスが大量にため込まれているのですが、永久凍土が溶け始めると、メタンガスが大気中に出てきてしまいます。
メタンガスとは、温室効果ガスのひとつです。二酸化炭素(60%)に次いで2番目に大きい効果をもたらしている(20%)ものです。メタンガスは、同じ量あたりで比べると、二酸化炭素の二十倍以上も強い温室効果ガスなのです。永久凍土からメタンガスがたくさん出ていくと、温暖化が進み、ますます温度が上がります。するとますます永久凍土が溶けるので、ますますメタンが出て、ますます温暖化が進む……この悪循環の可能性も指摘されています。
温暖化の構造にはほかにもいくつもの自己強化型フィードバックが重なっていると考えられています。多くの人は温暖化といったときに「ゆるやかに直線的に気温が上昇していく」というイメージを抱いていますが、こうした悪循環が重なっていくとしたら、加速度的に気温が上昇する可能性もあるのです。