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日刊 温暖化新聞|温暖化REPORT
著者: | Niklas Hohne, Markus Hagemann, Sara Moltmann | 発行: | WWFインターナショナル、アリアンツ・グループ (要約/日本編は、WWFジャパンによる) |
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発行日: | 2008年6月 (要約/日本編は2008年7月11日) |
ページ数: | 18ページ |
入手先: | PDFダウンロード |
- 「G8気候変動対策スコアカード」は、G8各国を対象に、それぞれの国の排出状況や気候変動対策など、気候変動に対する対策を総合的に評価したものである。さらに、「プラス5」諸国(ブラジル、中国、インド、メキシコ、南アフリカ)についての情報も盛り込んでいる。
- WWFインターナショナル:100カ国以上で地球環境の保全に取り組む、世界最大の民間自然保護団体(NGO)。希少な野生生物の保護から地球温暖化防止まで幅広い活動を行なっている。
http://www.panda.org/ - WWFジャパン:1971年に世界で16番目のWWFとして誕生し、30年以上にわたって国内外で自然保護活動を続けている。
http://www.wwf.or.jp/aboutwwf/ - アリアンツ・グループ:1890年に設立され、保険、銀行、不動産管理の各分野で国際的に業務を展開している。日本には、アリアンツ生命保険株式会社、アリアンツ火災海上保険株式会社がある。
概要
国際社会にとって、気候変動が重大かつ喫緊の脅威となるなか、G8(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、ロシア、イギリス、アメリカ)とほかの主要な先進国は気候変動への取組みを先導する大きな責任を有している。排出量削減のための政策、対策導入ではリーダーシップを発揮することが求められるほか、5つの主要な開発途上国(ブラジル、中国、インド、メキシコ、南アフリカ)やほかの途上国に対しては技術移転と資金的援助を通じて持続可能な開発を促進しなければならない。
このスコアカードは、2050年までに排出量を80%削減するのに十分な方策を各国が実施しているかどうかという点を最重要基準として、G8各国の気候変動対策を総合的に評価したものである。これに加え、エネルギー効率、再生可能エネルギー、炭素市場という3つの項目から国ごとの評価を行なっている。
スコアをはじめ、「エネルギー効率」「再生可能エネルギー」「炭素市場」に関する成績に基づく主な分析結果は以下の通り。
- アメリカ、カナダ、ロシアは落第点。
排出量が増加傾向にあるものの、削減対策がほとんどとられていない。- イタリアと日本は低中位。
努力をしているものの、総排出量は増加傾向。日本は、高効率エネルギーと(WWFがその使用を有効な代替案としてみなしていない)原子力の使用により、先進国の平均値と比べて(1人当たり、GDP当たり、工業生産当たり)の排出率が低い。しかし強制力のある削減計画がないため低いスコアとなった。- 上位3カ国はイギリス、フランス、ドイツ。
排出量は1990年代に減少した後、安定しているか横ばい状態となっている。EUが定めた2020年の温室効果ガス排出削減目標とエネルギー効率改善、再生可能エネルギー目標を支持しているが、早急な施策を追加しなければ排出量が増加する可能性が高い。- 前向きな動向の例
EUの排出量取引制度改善、カナダやアメリカでの州レベルでの動き、G8各国で気候変動対策についての国内議論が活発化、日本をはじめとするエネルギー効率向上への取組み- 後退している例
日本、フランス、ドイツ、EUは、気候変動に関して意欲的な目標を公表しているものの、現時点で目標達成のための政策を策定していない。カナダやロシアでは総排出量が増加しており、特にカナダは今後も増加が予測されている。- 潜在的なエネルギー効率向上の余地が十分に生かされていない。
日本は、製品や車に関するエネルギー効率向上基準(トップランナー基準)で高得点を獲得しているが、建物や電力部門におけるエネルギーの有効利用の可能性をまだ残している。カナダ、アメリカ、ロシアは政策が不十分であるか、まだ存在していない。- 再生可能エネルギーに対する支援が成功している国もあるが、大半は不十分。
ドイツでは再生可能エネルギー支援のしくみを確立するために積極的な展開がなされているが、ほかのほとんどの国では期待されているほどの展開がない。- 炭素市場は成熟しつつある。
ほとんどの国が、排出権取引やクリーン開発メカニズムなどを通して炭素市場を活用している。カナダ、アメリカ、ロシアではそのような活動がまったくないか、ほんのわずかしかない。- 「プラス5」諸国(ブラジル、中国、インド、メキシコ、南アフリカ)
この5カ国は、今後の排出量増加が予測されているが、どの国も排出量増加を抑えるための対策をとっている。ブラジル、中国、インドは再生可能エネルギー促進を支援しているが、G8諸国がこの5カ国に対し、今後どのように支援を行なっていくか、また5カ国自身がどのくらいの取組みをしていけるかが課題である。- スコア分析
スコア(表1)は12の指標に基づいている。このスコアは、世界の温度上昇を2℃未満に抑えるという目標に対し、どの国の政策も十分とはいえないことを示している。気候変動の緊急性を踏まえると、G8諸国の課題は多い。EUは2020年に向けて中期目標を設定し、全世界的に前進する意思を示しているが、ロシア、日本、カナダ、アメリカといったほかのG8諸国はこれまでのところ、この課題を真摯に受け止めていることを示すような目標や政策をほとんど打ち出していない。
スコアは、1位から順に、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、日本、ロシア、カナダ、アメリカと続く。
日本語版要約では、以上の概略をまとめたあと、エネルギー効率に関する成績、再生可能エネルギーに関する成績、炭素市場に関する成績として、各国の詳しい情報がまとめられている。
そして、日本のスコアカードを紹介する前に、「スコアカードの説明」として、カード内に書かれた数字が具体的に何を示しているのか、どのような比較に基づく評価なのかを詳しく説明し、集計方法についても触れている。
集計方法の主なポイントは以下の通り。
・G8各国の総合評価は12の各指標を集計したもので、過去、現在、将来の成績にそれぞれ1/3のウェイトがかけられている。(表2)
・WWFは原子力を有効な政策とは考えないので、原子力の使用を支持する政策方針はマイナスのスコアがつけられている。
第5位の日本のスコアカードは表3として掲げる。
さらに、日本の気候変動政策について、排出量削減、再生可能エネルギー促進の状況を、「電力/原子力」「産業」「家庭/サービス業」「運輸」「再生可能エネルギー」の各部門からまとめている。
最後に付録として、「G8各国の国レベルでの部門別政策のスコア詳細」「G8各国の最終スコア」を掲載している。