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日刊 温暖化新聞|温暖化REPORT
発行: | 千葉大学公共研究センター、NPO法人環境エネルギー政策研究所 |
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発行日: | 2008年9月16日 |
ページ数: | 11ページ |
入手先: | http://sustainable-zone.org/ |
- 千葉大学公共研究センターと環境エネルギー政策研究所が、日本国内における再生可能な自然エネルギー供給の実態を自治体ごとに試算し、「その区域の民生用エネルギー需要を、その区域での再生可能な自然エネルギーのみで賄える100%エネルギー永続地帯」を調査したレポート。昨年7月に発表した2006年度版では電力のみを扱っていたが、今回は電力のほか熱についても把握した(バイオマスによる熱は未推計)。電力だけで見た場合、域内の民生用電力需要を再生可能な自然エネルギーのみで満たしている自治体数は、昨年度の83市区町村から86市区町村に増加している(昨年度版は集計方法を微修正後)。なお、2006年度版は日本の長期削減目標を打ち出した「福田ビジョン」にも引用された。
- 環境エネルギー政策研究所:特定非営利活動法人として、持続可能なエネルギー政策の実現を目的とする、政府や産業界から独立した第三者機関。
概要
今回の試算は、2007年3月末時点のデータをもとにまとめた2007年度版。電力のみで算出した昨年に比べ、熱についても把握したことで、はじめて日本国内における再生可能な自然エネルギー供給の実態が市区町村ごとに明らかになった。
日本の自然エネルギー供給(電力・熱)のなかでは、小水力発電が最も大きく47.5%を占めていることがわかった。以下、太陽熱利用(12.4%)、風力発電(11.0%)、地熱発電(10.8%)、温泉熱利用(7.4%)、太陽光発電(5.1%)の順。このような自然エネルギーによるエネルギー供給量は、日本の民生用エネルギー需要(電気+熱)量の3.22%にとどまっている(図1)。
自然エネルギーによるエネルギー供給が域内の民生用エネルギー需要の10%を超える都道府県が7県あり(大分県31.38%、秋田県18.30%、富山県17.69%、岩手県11.86%、長野県11.33%、鹿児島県10.83%、青森県10.58%)、なかでも大分県では民生用エネルギー需要の3割以上を自然エネルギーで賄っている。
市区町村別では、62の市区町村が再生可能な自然エネルギーのみで域内の民生用エネルギー需要を満たしていることがわかった。これらの市区町村は「100%エネルギー永続地帯」と認められる(表1に自給率トップ10を掲載)。また、自然エネルギー発電のみで域内の民生用電力需要を満たしている市区町村は86、自然エネルギー熱のみで域内の民生用熱需要を満たしている市区町村は9つあることがわかった(図2)。
「永続地帯」とは、「エネルギー永続地帯」と「食糧自給地帯」からなり、うち「エネルギー永続地帯」は、その区域における再生可能な自然エネルギーのみによってエネルギー需要のすべてを賄うことができる区域をさす。さらに、その区域で得られる再生可能な自然エネルギーと食糧の総量が需要量を超えていれば「永続地帯」となる。このような「永続地帯」指標は、(1)長期的な持続可能性が確保された区域を見えるようにする、(2)「先進性」に関する認識を変える可能性を持つ、(3)脱・化石燃料時代への道筋を明らかにする、といった役割を担うと考えられる。
また、試算結果から政策的には、(1) 食糧自給率に加えて、エネルギー自給率を政策目標とすべき、(2) 日本に適した自然エネルギーにもっと注目すべき、 (3) 地方自治体におけるエネルギー政策を立ち上げるべき、 (4) 国はエネルギー特別会計の一部を地方自治体の自然エネルギー普及に振り向けるべき、 (5) エネルギー需要密度が大きい都市自治体においては、自然エネルギー証書の購入などの形で、自然エネルギーの普及拡大に寄与すべき、(6)自然エネルギー供給の基礎データが統計情報として定期的に公表されるようにすべき、という6点が指摘されている。
前回からの主な変更点としては、「電力」に加えて「熱」についても把握したことで、わが国ではじめて国内の自然エネルギー供給の実態が市区町村ごとに明らかになった。(「熱」に含まれる自然エネルギーの種類は、太陽熱、地熱、温泉熱、など。)また、昨年版と比較すると、今年度は、全体として、自然エネルギー発電による民生部門電力消費量の自給率が微増(3.53%→3.74%)し、なかでも太陽光発電、バイオマス発電、風力の伸びが大きい。一方、小水力、地熱は横ばいにあることが分かった。
- <図1> 自然エネルギーによるエネルギー供給の状況(日本全国:2007年)
- <表1> 100%エネルギー永続地帯市区町村トップ10(2007年)