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日刊 温暖化新聞|あの人の温暖化論考

企業にとっての温暖化問題の意味するところ / L・ハンター・ロビンス

人間は、将来を予測するのが好きだ。しかし、なかなか当たらない。最も近い予測ができる人は、変化の原動力となっているもののすう勢を理解できる人だろう。

変化の波に足元をすくわれることなく、変化の波に乗っていくためには、(1)現状維持を困難または不可能にする大きな力を理解する、(2)そのマイナス影響を最小限に抑えるためにどのように行動すればよいかを考える、(3)その大きな力が自分たちの成功の確率を高める機会をどのようにもたらすかを理解する、ことが必要だ。

今日、このような枠組みで考えるべき趨勢にはどのようなものがあるだろうか? グローバル化や、石油や水の不足といった資源の問題などはもちろんだが、気候変動もまさしくそのひとつである。

多くの企業が温室効果ガス削減のプログラムを始めるのは、いま行動することは実際、「あとで後悔しない」戦略であることに気づくからだ。もし気候変動が現実のものだとしたら、その問題に責任を持って対応するという意味で、自分たちはすでにその先頭に立っていることになるだろう。

もし科学者たちが間違っていて、気候に対する脅威などなかったとしても、どちらにしても、そのような取り組みは企業にとって望ましい行動であるはずだ。なぜなら、利益の増大につながるからである。操業のためのエネルギーを削減することによって、コストを削減できる大きな機会があるからだ。コスト削減の努力は、自社の温室効果ガス排出量を削減しようとするときの戦略と、「たまたままったく同じだ」というだけの話なのだ。
 
ビジネスリーダーの多くが、倫理的に考えて、気候変動を緩和すべきだと考えている。ウォールマートのCEOリー・スコットは、フォーチュン誌で「大気中にこういった化学物質をすべて排出することは良いことではない。都市にスモッグをまき散らすことも良いことではない。第三世界の川に化学物質を垂れ流しにし、だから先進国で安くモノが買えるのだということも、良いことではない。こういったことは、環境保護主義者であろうがなかろうが、本質的に悪いことなのだ」と述べている。

しかし、このようなスタンスには、しっかりしたビジネス上の裏付けもある。温室効果ガスを削減するための積極的なプログラムを進めることは、企業にとっては大きな利益を生むものであり、また、政府を含めとする非営利組織にとっては、コスト効果の高いものだからだ。

2005年10月、世界最大の小売業で、だれよりも人々に「もっとたくさん買いなさい」と言い続けてきたウォールマートが、次の3つの公約を発表した。

  • エネルギーは100%再生可能エネルギーにする。
  • 廃棄物をゼロにする。
  • 資源と環境を持続させる商品を売る。

その目標を達成するため、ウォールマートは6万社を超えるサプライヤーと協力をして、どうすれば「手頃な値段で持続可能なモノをつくり出せるか。各社がより持続可能になれるか」を学ぶ手助けをしている。
 
ウォールマートは、廃棄物の削減にも着手した。2013年までに包装の5%削減が目標だ。その結果、1年間に21万3000台のトラックを走らせる必要がなくなり、32万4000トンの石炭と2億9000万リットルのディーゼル燃料が節約できると見積もられている。

同社は実際に、「キッズ・コネクション」のおもちゃラインの包装を減らすことによって、1年間に427のコンテナを減らし、出荷コストを240万ドル削減し、3800本の木と1300バレルの石油を使わずにすんだ。

ウォールマートでは、このような取り組みをグローバルに展開すれば、110億ドル近くの節約になると見積もっている。ウォールマートのサプライチェーンだけでも、34億ドルの節約である。

ウォールマートは、「倫理的なサプライヤーの取り組み」を実行すると約束している。これまでサプライヤーとは、極めて短期的な売買契約しかしていなかったが、これからはより長期的で持続可能なパートナーシップを構築しようと考えているのだ。

そのようなプログラムのひとつが、ブラジルにあるキャンディ工場だ。廃棄物を処理・リサイクル・廃棄するためのシステムがなかったこの工場に対して、廃棄物管理プログラムを導入したのだ。おかげでこのサプライヤーは、年間6500ドルの新しい利益を得るようになった。

ウォールマートは、サプライヤーと協力してより持続可能な商品を提供する試みも進めている。たとえば、ゼネラル・エレクトリック(GE)のエコマジネーション・プログラムとパートナーシップを組み、LEDを市場に(そしてウォールマートの店頭に)導入した。LED電球は、耐久時間が長く、熱の発生が少なく、水銀を含有しておらず、他の電球に比べてエネルギー消費量が格段に少ない。照明は、ウォールマートの電力消費量の約3分の1を占めているのだ。

2004年以来、ウォールマートは、店頭の冷蔵ケースのLED照明システムの開発に1700万ドルを投資し、500店以上に設置してきた。これにより、年間380万ドルの節約になり、同社の二酸化炭素排出量を6500万ポンド削減できるという。

また、ウォールマートがこれだけ大量に購入することで、GEはLED電球の生産コストを大きく下げ、通常の電球と肩を並べる値段にすることができるだろう。

2007年3月、ウォールマートの四半期に一度のシニア・マネジメントおよび主要サプライヤーを集めた会合の席で、CEOのリー・スコットは、「ウォールマートは、子供用の玩具に使っているプラスチックから、有害物質を段階的に撤廃する」と述べた。7月にウォールマートは、「これからは、成長ホルモンの成分を含んだ乳児用のおもちゃは出荷しない」と発表した。

サプライチェーンのサステナビリティのマネジメントの重要性を発見した企業はウォールマートだけではない。このように、従来の枠組みよりも広く「システム全体にわたる企業のサステナビリティ戦略」という文脈で温室効果ガスを削減する企業は、温暖化防止に貢献するのみならず、株主に対してもいくつもの利益を提供することになるだろう。生産プロセスや施設の設計・管理、車両管理などでエネルギーや物質コストを削減できることから、財務パフォーマンスが向上する。

また、その業界におけるリーダーシップを担い、技術革新を進め、競争優位を保持し、評判とブランドを高め、マーケットシェアを増やすとともに、製品の差別化を図り、優秀な人材を惹きつけ保持し、従業員の生産性や健康を高め、職場でのコミュニケーションや創造性、モラルを高め、バリューチェーンのマネジメントを改善し、ステークホルダーとの関係をより良いものにすることにより、コアビジネスの価値を高めることができる。

同時に、コストを下げ、法を遵守し、厳しくなる炭素規制に先行して対策を進め、高い炭素コストを被る危険を減らすことにより、リスクも下げられる。

このようなマネジメント・アプローチの妥当性は、ゴールドマン・サックスが出したレポートを見ても明らかだ。「環境、社会、より良いガバナンス」という点で先進的な企業は、2005年以来、MSCIワールド・インデックスを25%も上回る成績を残し、そのリストに載っている企業の72%は、同業他社を上回るパフォーマンスを示しているのである。

(2008年2月29日)

L.Hunter Lovins

 

Profile

L・ハンター・ロビンス
ナチュラル・キャピタリズム・ソリューションズ(NCS)創設者、代表

天然資源に関する非営利のシンクタンク、ロッキー・マウンテン研究所(RMI)の共同経営者を20年間務めたのち、現職。サステナビリティ、エネルギー・資源問題、気候変動など、専門は幅広く、各国政府や、インターフェイス、三菱、バンク・オブ・アメリカ、ロイヤル・ダッチ・シェル・グループなど世界中の企業に関するコンサルティングを行う。2000年には米「タイム」誌の「ヒーロー・フォー・ザ・プラネット」に選ばれた。『ファクター4』『自然資本の経済』(共著)など著書多数。現在、プレシディオ・スクール・オブ・マネジメントにて教鞭をとっている。

 
 
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