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日刊 温暖化新聞|あの人の温暖化論考
誰もが天気について話しています。
一昨年も去年も、あらゆる新聞の第一面を飾った最も熱い話題は天候でした。この3年間にわたって私たちが経験してきた異常な気象の数々がようやくつながるようになってきました。少し前のグローブ紙やメイル紙のような全国紙の第一面にはこう書かれています。「カナダ人の8割は気候変動の影響を直接的に受けつつある」と。
私自身、それを感じてきました。2006年の夏には、私の家の井戸は2度涸れました。バンクーバー島が干ばつに見舞われたためです。温帯雨林の町トフィーノでは水が底をついてしまいました! 干ばつは11月の第1週に入るまで続いたのです。
そして今度は、「雨」が降り始めました。雨はカラカラに乾いた大地にたたきつけるように降り、すぐにバンクーバー周辺地域とバンクーバー島は大規模な洪水に見舞われました。何百人もの人が避難を余儀なくされ、南海岸全体で何千本もの木々が雨と嵐によって倒され、20万人以上が停電の被害を受け、自動車や道路、家々までもが押し流されたのでした。バンクーバーの水源であるキャピラノおよびシーモア貯水池はかつてないほど濁り、その結果、煮沸勧告が12日間にわたって出されたほどです。バンクーバーの住民にとっては、どれほどショックな出来事だったでしょう。スターバックスのコーヒーが飲めなかったのですから! バンクーバーのヤッピーたちは大きな危機に陥ったのです。
考えてみると、おそらくこの「コーヒーが飲めない!」事態こそが大きな鍵となったのでしょう。この出来事によって、カナダ人は気候変動に対して全く準備していなかったこと、そして私たちがその影響を感じ始めているということを痛感することになったのです。
2006年11月初旬に襲った嵐の間、私はクアドラ島の家に戻ることができませんでした。ナナイモへのフェリーが嵐のために欠航になったのです。家に帰る代わりに、私はバンクーバーの両親のところに泊まり、教会で行われたジョージ・モンビオットの講演に出かけました。教会は、(間違いなくカフェイン不足の)神経質な市民たちでいっぱいでした。通りが雨で溢れているなか、私たちは急いで教会の中に入り、この英国人ジャーナリストが「地球上で2度以上気温が上昇した場合、私たちの生活にどのような変化を及ぼすのか」という黙示録的な状況を鮮明に描写するのに耳を傾けたのでした。それは、かなり恐ろしい話でした。
家に帰ってから、私たちの住む町の一部は停電になっていないことを確認し、テレビ番組の「5th Estate」で反対論者たちに関するドキュメンタリーを見ました。世界中の科学者たちの集まりがうそをついていると主張する「温暖化懐疑論者」たちの話です。彼らは、「気候変動は起こっていると結論付けた科学者たち( http://www.ipcc.ch/ )は『クズのような科学』と間違った情報を世界に提示している」と言っています。このドキュメンタリーでは、こうした反対論者とは誰なのかを探った結果、化石燃料の企業に雇われた多くの人々だということがわかり、さらにそのうちの数人は、大手のタバコ会社に雇われて一般市民に対して「喫煙がガンの原因だとは証明できない」という情報操作をしたのとまさに同じ人たちだということを突き止めたのでした。
私は、まさかアーノルド・シュワルツェネッガー州知事のことを引用することがあるとは思ってもいませんでしたが、彼は2期目の宣誓スピーチのなかでこう言っています。「あなたのお子さんが具合が悪く、熱が上がっていると想像してください。もし100人の医師のうち98人がお子さんはただちに治療が必要だと言い、2人の医師がお子さんは大丈夫だといったとしたら、あなたはどちらのいうことを聞きますか? 98人、それとも2人のほうでしょうか? 私たちは、地球温暖化の存在を否定する数人の懐疑論者が正しいかもしれないという、わずかな可能性を信じて何もせずにいるべきなのでしょうか? いえ、違います。私たちはそうしてはならないのです」。カリフォルニアは2020年までに二酸化炭素の排出量を25%削減、2050年までに80%削減するという目標を掲げています。これは、北米では非常に革新的なスタンスです。
それでは、これはいったい何を意味しているのでしょう? 次は何でしょうか?
気候変動についての会話は次の段階へと進んでいます。気候変動は起きています。では私たちは何をすべきなのでしょうか? 環境情報が巷にあふれている昨今、誰もが何をすべきかを知っています。解決方法はあちこちにあり、そうした情報は誰もが入手することができます。
こうした会話が次の段階へ行くような変化をもたらすのは、若者にかかっている――私はそう思っています。つまり、実際にそれを「実践する」ように人々を動かすのです。気候変動は私たちの世代の課題です。私たちこそが気候変動の時代に人生を送る人たちなのです。次にこのことが話題に上がったとき、気軽に聞いてみましょう。「あなたは気候変動に対して何をするつもりですか?」と。威圧的にではなく、私たち一人ひとりが当事者であるような感じで 聞いてみましょう。私たち全員が、この問題を悪化させるのか、解決するかということに「直接」関わっているのですから。変化を起こすために、個人的であれ、政治的であれ、私たち一人ひとりの行動が必要になるでしょう。
天候について、単なる挨拶の会話で終わらせないようにしましょう。
Official An Inconvenient Truth(『不都合な真実』公式サイト) DeSmogBlog.COM Sierra Student Coalition Common Energy Monbiot.com(ジョージ・モンビオット公式サイト)
(2009年7月22日)
セヴァン・カリス=スズキ
環境活動家
1979年、カナダ・バンクーバー生まれの日系4世。1992年、12歳のとき、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された国連の「地球サミット」で大人たちに「この星をこれ以上、こわさないで」と訴えた“伝説のスピーチ”は、今もなお多くの人々に影響を与える。1997年から2001年まで国連の「地球憲章」で起草委員を務めたほか、2002年にはNGO「スカイフィッシュ・プロジェクト」を立ち上げ、2008年には「アースキャラバン2008」でグローバルリーダーを務めるなど世界的に活躍する若き環境活動家。著書に『あなたが世界を変える日』、『セヴァン・スズキの私にできること』など。