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日刊 温暖化新聞|温暖化REPORT
著者: | Eric Martinot |
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発行: | パリ:21世紀のための再生可能エネルギー政策ネットワーク(REN21)事務局
http://www.ren21.net/
ワシントンDC:ワールドウォッチ研究所(Worldwatch Institute)
http://www.worldwatch.org/
Copyright (c) 2008 Deutsche Gesellschaft fur Technische Zusammenarbeit (GTZ) GmbH. |
発行日: | 2008年2月 |
ページ数: | 54ページ |
入手先: | PDFダウンロード |
- 「2007年世界の再生可能エネルギーの現状報告書」は、再生可能エネルギーをめぐる市場と産業の動向、世界各国の政策、電力網が接続されていない農村地域のエネルギー源についてまとめたレポートである。先進国及び発展途上国から140人を超える研究者らが集結し、幅広い情報と専門的知識を元に作成された。
- REN21:2004年にドイツ、ボンで開催された再生可能エネルギー国際会議を機に発足した国際機関、政府、企業団体、NGOのメンバーからなるネットワーク。知識・情報の交換の場を提供し、再生可能エネルギーの利用拡大のための国際的な取り組みに貢献する活動を行っている。
- ワールドウォッチ研究所:1974年に設立された環境NGO。雑誌『ワールドウォッチマガジン(World Watch)』や『地球白書(State of the World)』などを発行し、研究調査を発表している。
概要
再生可能エネルギーは、CO2削減や大気汚染対策、エネルギー安全保障の改善や経済発展促進のための重要な鍵であり、従来型エネルギーに代わり、発電、温水・暖房、輸送燃料に利用されている。2007年には、EU27カ国と米国29州、カナダ9州を含む世界66カ国が再生可能エネルギー利用促進の政策目標に掲げた。
レポート前半には、風力や太陽光などの発電容量、投資額、バイオ燃料生産量など13の指標について、2005~2007年の数字の動きがわかる表が示されている。生産量や投資額などさまざまな観点から順位付けし、再生可能エネルギーをめぐる国別ランキング(2006年)が出されている。日本は、容量拡大への投資額で5位、太陽光発電(系統連系型)の新規容量で2位(いずれも2006年1年間での成長率)。2006年現在の既存容量では、小水力で2位、太陽光発電(系統連系型)で2位、太陽熱温水で4位となっている(表1)。
本レポートは大きく5つ(世界市場概観、投資フロー、産業の潮流、政策の展望、電力網が接続されていない農村地域)に分かれており、「世界市場概観」では、さまざまな再生可能エネルギーにおける世界の利用状況をその成長率を示しながら解説している。
世界各国で成長したものは、系統連系型太陽光発電、地熱エネルギー、バイオマス発電、熱電供給システム、太陽光発電、太陽熱給湯・冷暖房、エタノール燃料、バイオディーゼル。このうち、系統連系型太陽光発電は最も急速な成長を遂げた。2006年には世界市場の半分を占めるドイツが約85万~100万kW、日本が約30万kW、米国が約10万kW、スペインが約10万kWの増加だった。そのほか、日本で特に普及が進んだのは太陽熱温水設備。また、さほどの成長は見られないが、国によって成長しているものとして、水力発電、洋上風力発電、集光型太陽熱発電にも触れている。
「投資フロー」では、再生可能エネルギー設備容量拡大、製造工場・設備の新設、発展途上国に対する再生可能エネルギー投資への開発援助に対する投融資状況を見ていく。投資を行なっている大手機関投資家、世界の銀行、ベンチャーキャピタルについて、その投資額、投資の対象などを盛り込みながら解説する。
「産業の潮流」では、世界全体でみた再生可能エネルギー企業の増加数と成長内容、風力発電、太陽光発電などにおける主要企業の動向、それにともなう雇用拡大などについて詳しい現況説明を展開する。全体的に再生可能エネルギーを扱う企業は増えており、2006~2007年の数字でいえば、世界全体で85社あった再生可能エネルギー企業が140社に増加している。
「政策の展望」では、世界の国、州、県や郡、市レベルにおける再生可能エネルギーの政策目標、再生可能エネルギーによる発電促進政策などを詳しく見ていく。2007年までのところで、EU27カ国を含む少なくとも世界64カ国と米国29州(コロンビア特別区を含む)とカナダ9州などが再生可能エネルギーの政策目標を掲げている。そしてほとんどの国が、再生可能エネルギーによる発電の割合を全体の5~30%に設定している(表2)。
発電促進政策については、少なくとも60カ国(37先進国と23途上国)でさまざまな政策が進められている。最も一般的なのは固定価格制で、ここではさまざまな国や自治体の固定価格制について述べている。ほかに、電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別処置法(RPS法)、投資補助、屋上太陽光発電に対する余剰電力買取制度、競争入札などについて導入事例を盛り込みながら解説している。
さらに、太陽熱温水と暖房促進政策、バイオ燃料促進政策、グリーン電力購入と再生可能エネルギー証書、地方自治体におけるさまざまな政策について、世界各国の事例を紹介している。
日本での再生可能エネルギー発電に対する政府および民間、自治体の主な取り組みについても多くの事例が紹介されている。例えば、東京都が中心となって、グリーン電力購入推進に積極的な全国の自治体による「グリーンエネルギー購ネットワーク」を2007年に発足した事例、横浜市などの市町村や都道府県の半数以上が、「地域新エネルギービジョン」の一環として再生可能エネルギー導入を盛り込んだ都市計画を進めている事例などが挙げられている。
最後に「電力網が接続されていない(独立型)農村地域の再生可能エネルギー」について述べている。農村地域(独立型)へのエネルギー供給は、伝統的なバイオマス(木や農業残渣、糞など)の利用が一般的であるが、現在では、調理や照明、動力、揚水に近代的な技術(風力、太陽光発電、バイオマスガス化、小規模水力など)の導入に目が向けられているからだ。報告書では、農村地域(独立型)で再生可能エネルギーがどのように活用されているかを述べ、あわせて電化政策についても紹介している。
巻末には、このサマリーに抜き上げた表のほかにも、「上位10カ国の風力発電容量2006年」、「発展途上国、EU、上位6カ国の再生可能エネルギー容量2006年」や「再生可能エネルギー新規・既存容量2006年」など、図や表を多く盛り込んでいる。また用語集を載せ、専門用語について詳しく説明している。