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日刊 温暖化新聞|温暖化REPORT

海外レポートサマリー:気候変動に強い町:東アジア都市のための手引書――気候変動影響に強くなり、災害危機管理を強化するには――:国連国際防災戦略、防災グローバル・ファシリティ、世界銀行(東アジア太平洋局持続可能開発部門)(2008年6月)

発行: 国連国際防災戦略(United Nations International Strategy for Disaster Reduction)、防災グローバル・ファシリティ(Global Facility for Disaster Reduction and Recovery)、世界銀行(東アジア太平洋局持続可能開発部門)(The World Bank Sustainable Development East Asia and Pacific Region)
発行日: 2008年6月
ページ数: 175ページ
入手先: PDFダウンロード
  • この手引書は、日本を含む東アジア地域の地方自治体が気候変動についての概念と結果についてより理解を深めるために作成された。都市はどうすれば気候変動影響を避けることができるのか、あるいは最小限にとどめられるのか。東アジアですでに行なわれているさまざまな都市の対策と実践成功例を紹介しながら、「気候変動に強い町」をつくるための方法を探る。
  • 国連国際防災戦略(United Nations International Strategy for Disaster Reduction): 2000年に設立された国連のプログラムで、自然災害やそれに関連する事故災害および環境上の現象から生じた人的、社会的、経済的、環境的損失を減少させるための活動にグローバルな枠組みを与えるという目的をもつ。持続可能な開発に不可欠な要素として、防災の重要性に対する認識を高めることで、災害からの回復力を十分に備えたコミュニティーを作ることを目ざしている。
  • 防災グローバル・ファシリティ(Global Facility for Disaster Reduction and Recovery):2006年6月、世界銀行理事会によって設立が承認された。国連国際防災戦略(ISDR)システムの下で災害による損失軽減のための長期的なパートナーシップとして、2005年に神戸で開催された国連防災世界会議の成果文書「兵庫行動枠組」を達成することを目的とする。
  • 世界銀行東アジア太平洋局持続可能開発部門(Sustainable Development East Asia and Pacific Region):世界銀行に設けられた部署の一つ。東アジア太平洋地域の持続可能な発展における専門部。

概要

人間が排出する温室効果ガスが原因となって地球の気候が変化していることは、明白な事実である。大気中の熱の温度が上昇すると、気候パターンを変えるプロセスが起こり、気温、海面、嵐の発生頻度に影響を及ぼす。都市部、特に沿岸地域はこの影響を大きく受ける。

アジアではすでにかなりの数の洪水が起こっている。21世紀初め以降、アジアでは550件以上の洪水が起こり、その被害者数は8億5,000万人に及んでいる。中国では都市部に住む人口は4億人にのぼり、うち1億3,000万人が海面上昇の影響を受けやすい沿岸部に住んでいる。都市部、特に影響を受けやすい地域にとって、水に関する気象事象をはじめとする災害の頻発に対する準備や予防策は大きな課題である。

各都市が直面している持続可能な発展、気候変動影響、災害危機管理の問題は、大きな意味でつながっている。気候変動が引き起こす災害は、何十年にもわたって都市の成長をむしばむ可能性がある。都市の管理、成長、空間計画を進める上では、災害危機管理を考慮しなければならない。そして、気候変動対策も必要である。効果的な災害危機管理は、気候変動への適応策の重要な要素なのだ。

気候変動は都市の脆弱性にどのような影響をもたらすだろうか? 東アジアをはじめとする世界の都市では、持続可能で回復力に富む地域共同体を築くために、どのような教育や能力開発、資本投資を行なっているのだろうか? 本手引書は、東アジアをはじめ世界の都市における優れた実践例をふんだんに紹介し、気候変動に対する意識が高まり始めた都市から、すでに気候変動戦略を持って制度を実施している都市まで、幅広く応用できるレポートとなっている。

本手引書では、適応策と緩和策の定義を含め、気候変動影響と災害危機管理について詳しく説明した上で、「気候変動影響を受けやすい地域(「ホットスポット」)であるかどうかを評価するためのステップ」や、「都市を情報発信基地にするためのプロセス」を詳細に提案し、最後に適応策と緩和策の実践成功例を紹介している。実践例は、エネルギー、運輸、インフラ、都市緑化、組織構造と情報基地づくり、災害危機管理システム開発など16の分野について、それぞれ優れた都市の実践例を挙げている。日本からは東京都が、気候変動戦略、洪水対策、建設基本計画、雨水利用計画など多くの分野で実践例として紹介されている。

気候変動戦略を進めていく上では、国の閣僚参加による強力なサポート体制を構築したり(シンガポール)、小委員会や作業部会を細かく設置したり(シンガポール、フィリピン・ダグパン市)、災害対策と気候変動対策を包括的に進める体制を作ったり(フィリピン・マカティ市)、官民共同の気候変動適応策研究センターを設置したり(フィリピン・アルバイ州)するなどが主な好例として取り上げられている。

エネルギー部門における気候変動緩和策では、米国ニューメキシコ州アルバカーキ市が積極的な取り組みを行っている。代替エネルギー、混合燃料、ハイブリッド車、アイドリング削減などを推進するほか、市民向けのエネルギー消費に関する教育プログラムを実施。また、信号をLEDに取り替えてエネルギー消費量を9割カットした。市役所、立体駐車場、駐在所、消防署、コミュニティセンターなどを効率的な照明に転換し、年間500万キロワットのエネルギーを削減し、37万5,000ドルの経費削減に成功している。

運輸部門における主な気候変動緩和策としては、車の排出量基準の設定、車の通行料制度、カーシェアリングなどに取り組む都市が目立つ。ロンドンは「低炭素排出ゾーン」を市内に設置、ミラノは車両侵入規制システム(エコパス)導入している。最低3人を乗せている車のみ通行を許可し、交通渋滞緩和と炭素排出量削減に成功したジャカルタの例も興味深い。中国の東灘は、カーシェアリング、炭素排出ゼロ車への転換、近隣地域間の移動には無公害バス・水上タクシー・トラムのいずれかを使用、バイクを禁止し電動スクーターか自転車に転換するなどの計画を立てている。前述のアルバカーキ市は、安全で魅力的かつ利用しやすい徒歩環境を整備することで、都市計画と住民の健康をつなげた施策を展開している。ほかにも、交通渋滞緩和、炭素排出量削減、さらには住民の健康を目指して、歩道や自転車道の整備・拡大に乗り出している都市は多い。

 
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