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日刊 温暖化新聞|温暖化REPORT
著者: | Janet L.Sawin Eric Martinot |
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発行: | 21世紀のための再生可能エネルギー政策ネットワーク(Renewable Energy Policy Network for the 21st Century, REN21)
http://www.ren21.net/
Copyright © 2010 Deutsche Gesellschaft für Technische Zusammenarbeit (GTZ) GmbH. |
発行日: | 2010年7月15日 |
ページ数: | 80ページ |
入手先: | PDFダウンロード |
- 世界の再生可能エネルギーに関連する市場や投資、産業の動向、各国の再生可能エネルギー政策、農村地域での再生可能エネルギーの活用についてまとめた報告書。第5版となる本レポートは、2010年初期までの最新のデータを集積し、図や表をふんだんに盛り込みながら、情報量、分析内容とも一層充実したものとなっている。世界的な経済危機にも関わらず、成長を続ける再生可能エネルギーの現状と鍵となる動向を追う。
- 21世紀のための再生可能エネルギー政策ネットワーク(REN21:Renewable Energy Policy Network for the 21st Century):2004年に発足した国際機関、政府、企業団体、NGOのメンバーで結成されたネットワーク。エネルギー分野や開発分野、環境分野における利害関係者の協力に基づいて、国際的なリーダーシップを発揮するための情報交換の場を提供し、発展途上国および先進国での再生可能エネルギー利用拡大に向けた政策展開を支えることを目的とする。
概要
従来型のエネルギー源(石炭、ガス、石油、原子力など)に対し、再生可能エネルギーの重要性が高まっている。再生可能エネルギーは2009年、世界の発電容量の4分の1、電力供給量の18%を占め、今や多くの国で急速な成長を遂げている。
本レポートは過去のものと同様、再生可能エネルギーの最新の動きを「世界市場概観」、「投資フロー」、「産業の潮流」、「政策展望」、「農村地域の再生可能エネルギー」の5つのセクションに分けて詳しく解説する。2009年末時点で、日本は再生可能エネルギーの発電容量(すべての水力発電を含む)で世界5位、太陽光発電量(系統連系型)では新規容量と既存容量とも昨年と変わらず3位、太陽熱給湯・冷暖房の既存容量も昨年と変わらず4位を維持した(表1)。
●世界市場概観
再生可能エネルギーを利用した発電、給湯・冷暖房、輸送燃料の3つの市場における最近の発展をまとめる。
- <発電市場>
2009年、世界の再生可能エネルギーの既存容量(すべての水力発電を含む)は、2008年比で7%増の推定12億3,000万kWに達した。最も伸びたのが風力発電で、世界全体の容量では2008年から41%増の1億5,900万kWに達した。新規容量は過去最高の3,800万kWを記録しており、国別では、第一位は中国(1,380万kW増)、第二位は米国(1,000万kW増)だった。また全体の中で風力発電容量の割合が過去最高を記録した国もあった(ドイツ6.5%、スペイン14%)。バイオマス発電は2009年末には世界全体で推定5,400万kWの発電容量を記録した。ここ近年、特に伸びているのは欧州と、中国やインドなどの途上国である。経済開発協力機構(OECD)加盟国の中で固形バイオマスによる発電電力量が最も多いのが米国(420億kWh)で、2位は日本(160億kWh)、3位はドイツ(100億kWh)だった(いずれも2007年時点)。太陽光発電(系統連系型)は引き続き急速な伸びを見せ、2009年の発電容量が世界全体で53%増加、約2,100万kWに達した。年間の新規容量ではドイツ(380万kW増)が1位、イタリア(71万kW増)が2位、日本(48万5,000kW増)は昨年と同じ3位であった。ほかに、地熱発電、集光型太陽熱発電などについても説明している。 - <給湯・冷暖房市場>
バイオマスを利用した暖房の市場が欧州で着実に拡大した。特筆すべきは2009年に初めてスウェーデンでバイオマスのエネルギー生産量の割合(32%)が石油(31%)を抜いたことである。太陽熱利用による給湯・冷暖房容量は2009年に世界全体で21%増の約1億8,000万kWth(プール用の非ガラス集熱器を除く)となった。ほかに地熱の直接利用についても触れている。 - <輸送燃料市場>
バイオ燃料生産によって、世界のガソリン生産量の5%に相当するエネルギーが賄われた。主な輸送用のバイオ燃料は、トウモロコシやサトウキビから作られるエタノールと植物油から作られるバイオディーゼル。ほかに、ごく限られた量だがスウェーデンなどではバイオガスが使用されている。このうち、エタノール生産量が2009年に世界全体で前年比10%増の推定760億リットルに達し、米国とブラジルの2カ国の生産量だけでその88%を占めた。全体的には、エタノール、バイオディーゼルともに、2009年は緩やかな成長となった。
●投資フロー
2009年の再生可能エネルギー産業への投資動向を読み解く。世界の投資総額は前年を200億ドル上回る約1,500億ドル(大規模水力発電を除く)にのぼった。実用規模の施設(発電所やバイオ燃料精製所)への投資で群を抜いてトップだったのが風力エネルギー分野で、世界の投資総額の62%を占める627億ドル(2008年555億ドル)を受けた。一方、太陽光発電への投資は、太陽電池モジュール価格の大幅な下落などが理由で、2008年を56億ドル下回る171億ドルとなった。バイオ燃料分野でも、米国とブラジルのエタノール産業が経済的困難に直面したことで、工場新設への投資額は2008年の154億ドルから56億ドルに減少した。こうした減少により、再生可能エネルギー全体で見れば、風力発電の増加分が相殺された形となった。
2008年後半以降、多くの主要各国が景気回復策の一環として「グリーン経済刺激策」を導入し、再生可能エネルギーやエネルギー効率改善に約1,880億ドルが割り当てられた。しかし、政府の動きが遅れたため、2009年には約9%しか費やされなかった。2010年と2011年の利用が期待される。
●産業の潮流
2009年の各再生可能エネルギー産業の発展を探る。世界的な経済危機が続くなか、再生可能エネルギー産業は、ほぼ全分野で成長が見られた。特に中国の成長ぶりは著しく、再生可能エネルギー全般にわたって技術生産国としての重要性を高めた。特に風力タービン、太陽光発電、太陽熱温水システムでの躍進は目覚ましく、風力タービンの生産では中国が引き続きトップを維持し、2009年度の風力発電機メーカーの世界トップ10には中国のメーカー3社が昨年より順位を上げてランクインした。太陽光発電産業における薄膜太陽電池の製造は、前年に引き続いて全体の25%を維持。このうち、米国のファーストソーラー社は、年間生産量が100万kWを上回る110万kWに達した。また、日本のシャープと昭和シェルの2社を合わせた年間生産量は50万kWだった。太陽電池全体の製造は、中国本土と台湾だけで半分近くの49%を占めており、次いで欧州(18%)、日本(14%)、米国(6%)だった。また、再生可能エネルギー産業の雇用は全般的に増加し、世界全体で300万人を超えた。
●政策の展望
再生可能エネルギー促進のための政策やグリーン電力、自治体の取り組みなどについて取り上げる。再生可能エネルギーに関連する政策目標や促進政策を掲げている国は、2010年初期には100カ国を超え、2005年初期のほぼ2倍となった。こうした政策は、再生可能エネルギー分野における市場や投資、産業の発展に大きな影響を及ぼしてきた。新たな国家目標を導入した国は、オーストラリア(2020年までに電力供給量における再生可能エネルギーの割合を20%)、韓国(2030年までに一次エネルギーにおける再生可能エネルギーの割合を11%)などがあり、日本は2020年までに太陽光発電容量を1,400万kWに達するという目標を掲げている。
発電促進政策で最も一般的な政策は「固定価格買取制度」で、2010年初期までに、少なくとも50の国と25の州や省で導入されている(半数以上は2005年以降に制定)。「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(RPS法)」や補助金など多様な政策が多くの国や地域で導入されている。ほかに、太陽熱などの再生可能エネルギーによる給湯・暖房やバイオ燃料などの政策についても説明する。
グリーン電力購入については、欧州、米国、オーストラリア、日本、カナダにおける顧客数が600万を超えており、引き続き拡大傾向にある。欧州で最も進んでいるのはドイツで、2008年にグリーン電力を購入した一般家庭は推計220万件、企業は推計15万件にのぼった。日本は、企業や自治体などに5,800万kWh分のグリーン電力証書を販売した。ほかに、世界各国の自治体レベルでの温室効果ガス排出削減や再生可能エネルギー利用促進のための目標設定や政策なども詳細に述べられている。
●農村地域の再生可能エネルギー
経済的な理由などにより電力網が整備されていない途上国の農村地域における再生可能エネルギーの成長ぶりを取り上げる。現在多くの国で、家庭、小規模企業ともに、エネルギー形態が従来型から最新型に変化しつつある(例えば、料理用燃料は薪から木材チップに、照明用燃料は灯油から太陽エネルギーなどの電力に)。途上国の農村地域における再生可能エネルギー使用についての統計を体系的に集めるのは困難なため、本レポートでは、中国やインド、バングラデシュの成功例を盛り込みながら、一般的に利用促進されている技術やプログラム、料理と暖房用エネルギー、灌漑システム、などについて説明するほか、世界銀行の地域開発炭素基金などのクリーン開発メカニズム(CDM)による分散型エネルギープロジェクトなどにも触れている。