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日刊 温暖化新聞|温暖化REPORT

海外レポートサマリー:持続可能な都市のインフラ――ミュンヘン版二酸化炭素のない未来への道――:シーメンスAG(2009年3月11日) Sustainable Urban Infrastructure.:Ausgabe Munchen - Wege in eine CO2-freie Zukunft : SiemensAG March 11, 2009

著者: ヴッパータール気候・環境・エネルギー研究所(Wupperthal Institut für Klima, Umwelt, Energie GmbH)http://www.wupperinst.org
発行: シーメンスAGhttp://w1.siemens.com/entry/cc/en/
発行日: 2009年3月11日
ページ数: 75ページ
入手先: PDFダウンロード(ドイツ語版)PDFダウンロード(英語版)
  • この研究は、シーメンスAGの依頼によってヴッパータール気候・環境・エネルギー研究所が行った調査研究。大都市は地球の表面積でわずか1%を占めるにすぎないが、全地球のエネルギーの75%を消費し、温室効果ガスの80%を排出している。都市化、大都市化の傾向は世界的な傾向で、現在すでに都市に住む住人の数は、全世界人口の半数に及んでいるが、2025年にはさらに60%にまで達すると見込まれている。本研究では、将来の温暖化の鍵をにぎっている大都市の、二酸化炭素を出さない未来への可能性を、130万人の人口を抱えるドイツの大都市ミュンヘンの2008年から2058年の50年間をモデル・ケースとして検証している。
  • シーメンスAG:シーメンス(ベルリンおよびミュンヘン)は、電気・エレクトロニクスにおけるグローバル企業で、インダストリー、エナジー、ヘルスケアの三つのセクターで事業を行う。約43万人の従業員を擁し(継続事業)、製品の開発と製造、高度なシステムとプロジェクトの設計と施工、ならびに個々の要求に対応した幅広いサービスを提供している。160年以上の間、シーメンスは卓越したテクノロジーやイノベーション、品質と信頼性、そして国際性の象徴として歩んでいる。
  • ヴッパータール気候・環境・エネルギー研究所(Wupperthal Institut für Klima, Umwelt, Energie GmbH):1991年に世界的に著名な物理学者エルンスト・ウルリヒ・フォン・ヴァイツゼッカー(Ernst Ulrich von Weizsäcker)によって設立された、ドイツで最も評価が高い環境研究所。140人の研究者による学際的な研究がさかん。

概要

2058年で市制900年を迎えるドイツの大都市ミュンヘンを例に、大規模都市での、エネルギー分野においての二酸化炭素(CO2)削減方法を検証している。(注:エネルギー分野でのCO2排出量は、全排出量において、産業国では80%、世界全体では60%を占めている)

報告は2部構成で、前半は、理想的効率的に改革が進むことを想定した「目標」シナリオと、それほど効率的・徹底的ではない改革を進める「ブリュッケ(ドイツ語で「橋」の意)」シナリオを想定して、それぞれの場合の経済的採算性(投資とその回収にかかる時間・規模)とCO2削減率を具体的に提示している。後半は、具体的な市内の2つの地域(既存の一市街区と今後建設予定の市街区)の実践例を見ていきながら、エネルギーの効率性について分析している。

結論として、建築物、暖房や給湯、発電、配電ネットワーク、および交通分野において、大規模な設備投資とパラダイムの変換を行えば、現在の生活水準を制限することなく、欧州連合(EU)が2050年までに達成することを目標としているCO2の半減をも大幅に上回る削減が達成できるとしている。

最大限に効率よく進む「目標」シナリオでは、二酸化炭素量を90%削減し、1人あたりの排出量は年間750キログラムにとどまることになる。

新しいCO2削減技術の開発やCO2の回収・貯留(CCS)を当てにして、公共交通の利用がすすまず、電力需要も減らないという「ブリュッケ」シナリオにおいても、80%が削減され、1人当たり排出量は1.3トンまで削減される。

大規模な設備投資やパラダイム変換の鍵として想定されているものは、特殊な技術や、現在まだ開発途中のものではなく、すでに現在利用可能な技術とその組み合わせである。その主なものは、建造物の最適断熱化、再生可能なエネルギー供給、効率的な熱(暖房や温水)供給、省エネ機器の導入、照明システム、公共交通ネットの強化と電化などである。

例えば大規模な改革の具体例としては、21世紀半ばまでに、省エネ型住宅(Passivhaus)を基準とした改築や新築を行う。このためには、2007年に成立したエネルギー節減法で定められた投資よりも、さらに130億ユーロの追加投資が必要だ。これをミュンヘン住民1人当たりに換算すると、年間200ユーロ(年間ガス使用代金の3分の1に相当)である。このような投資をすることで、2058年には16億から26億ユーロのエネルギー代が削減でき、1人当たりでは1,200から2,000ユーロの節約になる。エネルギーコストの削減を合計すると、50年間で300億ユーロ以上と計算される。

実例をもとに検証した第2部では、理論的には、たった30年の期間で、それぞれの市街区のCO2を大幅に削減できることが示されている。

この研究レポートでは、ミュンヘンのような大都市においても、50年後までにCO2排出量を大幅に減らすことができることがわかり、温暖化の問題は、すでに今日の段階で問題の大きな部分は解決可能であり、同時に経済的にも採算がとれることを明らかにしている。

 
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