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日刊 温暖化新聞|温暖化REPORT
発行: | 欧州再生可能エネルギー評議会(European Renewable Energy Council)http://www.erec.org/ |
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発行日: | 2008年11月14日 |
ページ数: | 24ページ |
入手先: | PDFダウンロード |
- 2000年に設立された欧州再生可能エネルギー評議会(EREC):バイオエネルギー、地熱、海洋エネルギー、小規模水力、太陽電力、太陽熱、風力エネルギーの各部門において活動している再生可能エネルギー関連の企業団体、事業者団体、および研究組織の欧州における統括団体。年間売上高400億ユーロ以上、就労者40万人以上の規模を持つ再生可能エネルギー業界を代表する団体である。
概要
欧州連合(EU)加盟27カ国の首脳は2007年3月、「欧州連合における最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を、2020年までに20%にまで引き上げる」という法的拘束力のある数値目標を承認した。2008年1月、欧州委員会(EC)は再生可能エネルギー利用促進に関する指令案を発表しており、これが承認されれば、再生可能エネルギーに関する世界で最も意欲的な法律となる。
指令案では、最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合について、2005年を基準年とした一律増加分5.5%と、国内総生産(GDP)に応じた追加分を加算した数字を、各国に対する義務的数値目標として掲げている(表1)。
欧州の再生可能エネルギー業界は、現行の市場の成長状況や強い政治的後押しを考慮すると、各エネルギー部門の年間成長率を控えめに見積もっても、最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を2020年までに20%以上に引き上げられると確信している(表2)。しかしエネルギー消費を安定化するために、2010年から2020年にかけて強力なエネルギー効率化対策を導入しなければならないとしている。また部門別(電力、冷暖房、輸送用バイオ燃料)における再生可能エネルギーの構成もバランスがとれており(表3)、欧州にとって真の意味での「持続可能なエネルギーミックス」の始まりを約束している。
再生可能エネルギー各部門の技術的ロードマップの要点は下記の通り。
地熱は、イタリアなど欧州の一部地域でエネルギー源としてすでに利用されているが、近年の研究成果から、欧州であればどこでも地熱を利用し、経済的・環境的条件に合う発電ができることがわかり、新たな道が開けたところだ。今後は、2020年までに地熱利用の発電コストを2~5ユーロセント/キロワット時まで引き下げることを目標に、効率化や設備・運営コスト低減化のための技術開発が進められる予定。
バイオエネルギーは、雇用の拡大、エネルギー供給の安定化と多様化、農村部の発展など利点が多いため、将来に向け域内および加盟国内の発展に極めて重要な要素と目されている。技術的には、バイオエタノールやバイオディーゼル用の新原料開発や、バイオマス酵素加水分解や熱化学的変換などのエネルギー変換技術の開発で、2020年までに成果が出ると見込まれている。また燃料電池へのバイオエタノール利用や藻類バイオディーゼルの開発とそのジェット機燃料への応用など、新しい利用方法についても研究が進んでいる。
太陽熱利用部門はダイナミックな成長段階に入っており、向こう数十年間で関連雇用は50万人を超すと予測されている。家庭用温水器や温水暖房システムはすでに普及しているが、太陽熱を利用した冷房システム、工業用熱源供給、海水の脱塩処理などの新技術は、現在実証段階を終えて商品化段階にある。さらに、建物全体の暖房を太陽熱だけでまかなえるよう蓄熱エネルギー密度を8倍にする蓄電技術の開発も行なわれており、この分野の研究開発が拡大すれば、2030年までの実現も可能である。
太陽光発電で2020年までに欧州電力需要の12%をまかなうことも可能と業界団体はみており、そのためにはEU加盟各国の多くにおいて固定価格買い取り制度など適切な産業支援制度を数年以内に導入することが必要不可欠だとしている。技術的には、太陽光発電を主要な電力市場で普及させるために、太陽光発電システムの製造コスト低減化に向けた技術開発に力が注がれており、2020年までに製造コストは2ユーロ/ワットピーク、発電コストも11~22ユーロ/キロワット時とそれぞれ現在の半分まで下がると見込まれている。
太陽熱発電において、欧州はドイツとスペインを中心に国際的リーダーである。太陽熱発電は欧州の2020年電力計画において戦略的エネルギー源と位置付けられており、2008年10月時点で、スペインで登録されている太陽熱発電所建設事業全ての設備容量の合計は1万メガワット以上に及ぶ。技術的には、最も普及しているパラボラ・トラフ・コレクター発電の公称効率が16%とまだ低いため、より効率的な蓄熱用流体(溶融塩など)を特定するための研究が数多く進められており、実用化も遠くないと見込まれている。
小規模水力(設備容量:最大10メガワット)は、行政的・環境的障壁により期待ほどには成長していないが、特にEU加盟予定国において大きな潜在性を持っていると目されている(2020年までに新規加盟国から7.7テラワット追加の見込み)。小規模水力に関わる土木工学、電気工学、環境工学においては、環境との融合、コスト低減、発電量の最大化、ハイブリッドシステム、標準化などが技術的課題として取り組まれている。
海洋エネルギーは、世界的にも注目されており、2020年までに世界において海洋エネルギー利用発電の設備容量は約21ギガワット(世界の電力消費量の0.6%)に成長すると予測されている。しかし、商業規模の波力・潮力発電設備は数カ所で、海洋エネルギー技術を商業規模に拡大させるには、有効な電力転換技術の開発の他、規制の枠組みや経済的インセンティブの整備など技術以外の課題にも取り組む必要がある。
風力は2020年の数値目標達成において主力と目されている。世界の風力設備の6割を占める欧州はすでに風力では世界的リーダーで、2007年末にはEU27カ国における設備容量が5万6,000メガワット(EU総電力需要の3.7%に相当)を超えた。雇用面でも貢献しており、2020年までに風力関連雇用は最大50万人とされている。2020年までには、主に風況予測、大規模電力網システムへの統合、海上風力設備の開発・運転、風力タービンの4分野で技術開発の実現が見込まれている。