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日刊 温暖化新聞|温暖化REPORT

海外レポートサマリー:地球温暖化の代償——今のまま温暖化が進めば、どれだけのつけを払うことになるのか——:天然資源保護評議会(2008年5月) The Cost of Climate Change What We'll Pay if Global Warming Continues Unchecked : Natural Resources Defense Council, NRDC (May 2008)

主著者: フランク・アッカーマン(Frank Ackerman)
タフツ大学地球開発環境研究所(Global Development and Environment Institute) 

エリザベス・A.スタントン(Elizabeth A.Stanton)
ストックホルム環境研究所(Stockholm Environment Institute) USセンター
発行: 天然資源保護評議会
(Natural Resources Defense Council, NRDC)http://www.nrdc.org/
発行日: 2008年5月
ページ数: 42ページ
入手先: PDFダウンロード
  • 天然資源保護評議会(NRDC)の企画で、複数の研究員らによる研究レポート。米国における温暖化影響がもたらす経済コストを、「ハリケーン被害」「不動産損失」「エネルギー費用」「水確保」の4つの面から算定している。
  • 天然資源保護評議会(Natural Resources Defense Council, NRDC):120万人以上の会員とオンライン活動家からなるアメリカの環境NGO。1970年の設立以来、メンバーである法律家や科学者、環境問題専門家たちが自然資源、公衆衛生、環境の保護のため尽力している。ニューヨーク、ワシントンDC、ロサンジェルス、サンフランシスコ、シカゴおよび北京に事務所を持つ。

概要

地球温暖化は、世界中どの国にとっても大きな代償を必要とする問題である。米国に関していえば、このまま温暖化が進むと、国内総生産(GDP)の3.6%に匹敵する費用が必要で、2100年までには、温暖化によって受ける4大影響(ハリケーン被害、不動産損失、エネルギー費用、水確保にかかる費用)だけでその費用の半分を占めることになる。だが、躊躇している場合ではない。時間がかかればかかるほど、その代償は高くつき、打撃も大きくなっていく。

本レポートでは、このままの勢いで、これまでどおりのやり方で温室効果ガスを排出し続ければ、どんな未来になってしまうのかに焦点を当てる。ここで述べられている経済的な予測は、今の状態で温暖化が進んだ場合の最も悲観的な状況を基にしたものである。本レポートでは、温暖化が米国経済に与える影響を2つの方法で見積もっている。1つ目は、対象を具体的な4つに絞った方法、もう1つは米国全体でかかる費用を総合的に検証する方法である。総合的な調査では、一般的な法則を適用して、これまでどおりのやり方で進んだ場合の気候変動を予測する。4大影響についての詳しい研究では、部分的な見積りしか出てこない反面、米国特有の大きな特異性を持った気候変動によって必要とする経済コストを考察することができる。
では、具体的な4つ、ハリケーン被害、不動産損失、エネルギー費用、そして水費用は、温暖化によってどのくらいの代償を必要とするのか。

ハリケーン被害
大西洋沿岸及び湾岸地域を襲うハリケーンの勢いが増していることから、ハリケーンが米国経済に与える損失額は4,220億ドルである。

これまでどおりのやり方では、海水面の上昇によってハリケーンの勢いが増して、被害が巨大化することが予測されるが、たとえ勢力が変わらないとしても、海水面の上昇が被害を大きくするものと思われる。近年の平均では120億ドルの損失、死者は120人以上となっているが、このまま進むと、2100年までには年間で4,220億ドルの損失、死者の数は760人に跳ね上がる。

不動産損失
今のままの状況では、海面は2050年までには約60センチ、2100年までには約115センチ上昇すると予測される。大西洋沿岸及び湾岸地域は、海面上昇による不動産の損失も大きく、損失額は2100年までに年間3,600億ドルに達する見込みである。

エネルギー費用
気温が上昇すれば、エアコンや冷蔵・冷凍の需要が増える。現在エアコンを持たない北部地域でも必要になり、エネルギー費用が最も高い南部や南西部と合わせると、温暖化によって、2100年にはエネルギー業界の負担額は、1,410億ドルの増加が見込まれる。

水費用
2100年までに、水不足が最も深刻な地域へ水を供給するためには、年間9,500億ドルが必要となる。温暖化にともない、現在でも干ばつ問題に悩む西部や南西部では、干ばつの頻度が増し、事態はさらに深刻化する。

このように見ていくと、この4つだけでも、2100年までに、年間1兆9,000億ドル、つまり、米国のGDPの1.8%にあたる費用がかかると分析できる。

本レポートでは、「スターン・レビュー」として知られる“The Economics of Climate Change”(気候変動の経済学)改訂版を基に、温暖化によって米国が今後必要とする費用について、より正確で包括的な実態を示した。この新しいモデルを用いて、経済的損失のみならず、非経済的損害や破滅的状況をも含め、あらゆる角度からみて、温暖化はどのくらいの代償を実際に必要とするのかを予測した。気候変動の影響による費用が2100年までに米国のGDPの3.6%を占める、という見込みはこの新しいモデルによるもの。

温暖化によって今後被る経済的損失を見積もることは、政策決定においても重要な影響力を持つ。温暖化対策には莫大な費用が必要となるが、何も手を打たないでいれば、さらに大きな代償を払うことになる。米国政府は、近年、温暖化対策を講じることにいささか冷淡であるが、むしろ今こそ先頭に立って、温室効果ガスを囲い込むような政策を推し進め、全世界が協調して温暖化に立ち向かう上で、国際的なイニシアティブを取る意思を表明すべきだとしている。

その主張の一環として、米国政府が直ちに温暖化対策に乗り出すことこそが重要だと述べて、政策を提言。さらにページを割いて詳細な政策について記述している。その要旨は以下の通り。

  1. 温暖化を引き起こす公害に対して強制的な制限を設けた包括的な法律を制定し、すべての部門で投資を奨励、排出目標が達成できることを保証する。
  2. エネルギー効率向上のための投資をする上での障壁を克服し、現行の削減費用を軽減する。
  3. 新興のクリーン・エネルギー技術の進歩、展開を加速し、長期的な削減費用を軽減する。
 
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