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日刊 温暖化新聞|温暖化REPORT
著者: | Lorraine Yin, Zheng Huang, Henan Xu, Peijie Li |
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発行: | ザ・クライメート・グループ(The Climate Group)http://www.theclimategroup.org/ |
発行日: | 2009年8月 |
ページ数: | 54ページ |
入手先: | PDFダウンロード |
- 世界最大の温室効果ガス排出国である中国が世界の気候変動対策に果たせる貢献は計り知れない。前年に発表された初版に引き続き、本レポートは持続可能な発展と低炭素社会の構築を目指す中国の取組みを検証する。
- ザ・クライメート・グループ(The Climate Group):低炭素未来に向けて、世界各国の政府機関や影響力のある企業と連携し、気候変動対策を推し進める国際NGO。本部は英国で、中国、米国、オーストラリアに支部を持つ。
概要
2008年発行のレポートに続く本レポートは、エグゼクティブ・サマリー、序章、第1章「低炭素自動車」、第2章「産業界のエネルギー効率」、第3章「再生可能エネルギー」、第4章「低炭素建築と都市計画」の6部で構成。低炭素発展に向けた中国の各産業分野の動向と政策支援、今後の課題を取り上げている。全般的に、品質やコスト面での課題はあるものの、低炭素社会に向けての急速な伸びは力強い。
気候変動に関する科学的証拠がますます明らかになる中、私たちは地球の平均気温の上昇を2℃以内に抑えなければならない。そのためには炭素排出量を2000年レベルより50~85%削減することが求められている。いまや、中国は最大の二酸化炭素(CO2)排出国となりつつあることから、気候変動問題の打開に向けた中国の役割はますます重要になっている。
世界が掲げる温室効果ガス排出量の削減目標を達成するには、運輸、エネルギー、建築などの技術を駆使して取り組む必要がある。中国における低炭素技術の産業化は、中国国内だけでなく他国の排出量を削減することも可能にし、同時に中国の経済成長を促進させ得る。
エグゼクティブ・サマリーでは各章の概要をまとめているほか、中国の巨大市場が秘めている力が発揮されれば、国際市場での低炭素製品・サービスのコストが下がり、世界的な低炭素経済の実現につなげることができるとしている。
各章の主な内容は以下の通り。
序章
2008年に発行したレポート「中国のクリーン革命」は、中国の進める低炭素経済に向けた取り組みを認識していなかった人々を驚かせた。本レポートは前回のレポートを踏まえ、政府の報告書、第三機関の分析、最新報告書、非公式の議論など幅広い資料に基づいて、前回を上回る詳細を提示し、中国が成長するチャンスとその可能性を示している。
第1章「低炭素自動車」
- 国の自動車保有台数は現在5,000万台を突破。この傾向が続けば2020年には年間2億5,000万トンの石油を燃焼し、2030年には世界のCO2排出量の20%が中国の自動車に起因すると予想される。
- 自動車産業には291万人、関連産業には3,000万人が雇用されており、国内GDPの2.31%を占めている。
- 中国政府は、低炭素自動車の開発を重要課題に位置づけている。2009年には、低燃費で低排出量の小型自動車の開発計画を導入。さらに、50億元(約668億円)の直接的補助金交付や、1.6L以下の小型車に対する消費税率引き下げなどを決定した。
- 中国の自動車産業は電気自動車の世界的リーダーとなった。携帯電話の電池メーカーだった比亜迪(BYD)が、プラグインハイブリッド車の量産を開発したのはその一例。
第2章「産業界のエネルギー効率」
- 国家目標「2005年~2010年に産業におけるエネルギー原単位の20%を削減」に向けて、中国政府は産業界に対して多岐にわたる厳格な規制を打ち出し、組織能力や研究開発能力を強化した。
- 金属、化学、セメントなどの主要産業で、エネルギーを大量消費する企業トップ1,000社のエネルギー効率化対策で、2010年までに石炭換算で2億4,000万トンが節約される見込みである(表1)。
- 中国政府は、業種ごとの電力価格設定基準の差別化、消費エネルギーの削減量に応じた企業への補助金や税控除、省エネローンを提供する金融機関に対するグリーン貸付政策を行うほか、家電製品に対するエネルギー効率ラベルや製品認証制度を採用している。
- 中国の省エネ市場はすでに8,000億元(約1兆6,800億円)に達している。
第3章「再生可能エネルギー」
- ドイツや日本、スペインなど他国の奨励策により、中国製の太陽光電池の売上が伸び、中国の世界シェアは30%に達した(中国本土のみ。台湾を含めると40%)。単結晶シリコン、多結晶シリコン、薄膜電池などの技術は今後さらなる進歩が見込まれる。
- 太陽光発電の国内需要を促進するため、政府は2009年に製造コストの50~60%に相当する1ワットピーク当たり20元(約270円)の補助金を導入した。
- 風力発電も急激な伸びを見せている(表2)。2008年の発電容量は2007年から倍増、1,200万キロワット超に達した(アジアで第1位、世界で第4位)。「2020年までに3,000万キロワット」という国の中長期目標は、2010年に達成できる見込み。
- 再生可能エネルギーの中で、最も包括的な政策が掲げられているのは風力発電である(電力価格の最も低い開発業者の入札決定、国際企業の誘致、国内調達の促進に向けた最低70%の国産部品使用の義務付け、風力タービン製造への直接的補助金支給など)。
- 風力発電風車群(wind farm)、洋上風力発電所、風力・太陽光ハイブリッド発電システムなどの技術も進んでいる。
- 政府や自治体の普及策が奏功し、地熱ヒートポンプも急速に伸びている。導入容量は世界第5位(2007年)。
- バイオディーゼル燃料は、現在年間30万トンを製造。原料となる非食糧系の植物生産への補助金や、バイオ燃料企業への税控除などを導入し、生産拡大と利用促進を図っている。
第4章「低炭素建築と都市計画」
- 中長期省エネ計画(Medium and Long Term Energy Conservation Plan)で、すべての新築建物に対し、2010年までに50%の省エネ基準(4つの地方自治体などでは新築建物の65%)設定を目指している。
- 中国建設部は2006年、グリーンビルディング(環境配慮型の建築物)の評価基準(Evaluation Standard for Green Buildings)を設定、2007年にはより細かな技術上の規則とグリーンビルディング評価のための行政施策を発表した。基準は米国の環境配慮型建築の認証制度LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)に基づき、「スペースの節約と外部環境」「省エネとエネルギーの有効活用」「節水と水源の有効活用」「建築資材の節約と資源の有効活用」「内部環境と質」「建物管理」の6項目。
- 多角的な低炭素技術を取り入れた建築物の例は、LEEDのゴールド認定を中国で最初に取得した商業建築物、高水準のヨーロッパ式デザインを採用し省エネと利便性を兼ね備えた共同住宅、北京のエコ・シティプロジェクト(面積500ヘクタール、人口76,000人規模)など。
- <表1>
- <表2>