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日刊 温暖化新聞|温暖化REPORT
著者: | Jan Burck, Christoph Bals, Simone Ackerman |
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発行: | ジャーマン・ウォッチ(Germanwatch)ボン事務所、ベルリン事務所 http://www.germanwatch.org/ 気候行動ネットワークヨーロッパ(Climate Action Network Europe(CAN-E)) http://www.climnet.org/ |
発行日: | 2008年12月 |
ページ数: | 19ページ |
入手先: | PDFダウンロード |
- ジャーマン・ウォッチ(Germanwatch):1991年の設立以来、貿易、環境、南北問題について国内はもとより、ヨーロッパ・国際レベルで活動を展開するドイツの環境NGO。
- 気候行動ネットワークヨーロッパ(Climate Action Network Europe(CAN-E)):気候とエネルギー問題に取り組んでいるヨーロッパ有数のNGO(参加国25カ国、加盟団体数100以上)。気候行動ネットワークは、国際的に活動している組織で、世界各国の365余のNGOと連携して、危険な気候変動の抑制及び、持続可能なエネルギーと環境対策を促進していくことを国や企業、個人に働きかけている。
概要
気候変動パフォーマンス・インデックス(CCPI)は、ジャーマン・ウォッチと気候行動ネットワークヨーロッパ(CAN-E)が共同で発行。合計で地球上の90%以上のCO2を排出している57カ国を対象に、各国のCO2排出量や気候変動防止政策を評価・比較するものである。
CCPI2009では、1990年と比較して、気温の上昇を2℃未満に抑えるために必要な気候変動対策に乗り出している国は皆無であるとの判断を下した。
CCPIを作成するねらいは、これまで気候変動防止に積極的に取り組んできておらず、今なおその重要性を顧みないでいる国々に政治的・社会的な圧力をかけ、気候変動防止政策を促進させることにある。
CCPI総合評価(表1)は、最も優れている順に57カ国をランクづけしたもの。2009年は1位から3位に該当する国はなく、4位からスウェーデン、ドイツ、フランス、インド、ブラジル、英国、デンマークと続き、日本は57カ国中43位。米国は58位、最下位はサウジアラビアとなっている。本レポートでは、下位グループにランクしているロシア、米国、カナダ、オーストリアが、現在のCO2排出レベル、排出量の動き、及び、気候変動防止政策のいずれにおいても十分に実行できなかった国として挙げられた。今後、米国のバラク・オバマ大統領が公言しているとおり、米国が気候変動問題でリーダーシップを発揮していけば、国内外の政策の評価が上がり、米国のランクは上位に浮上するだろう。
CO2排出上位10カ国のランキング(表2)の1位は米国。以下、中国、ロシア、インド、日本、ドイツ、カナダ、英国(カナダと英国は同率)、韓国、イタリアと続く。この10カ国は2008年に引き続き、地球上に排出されるCO2の60%以上を排出している。それゆえ、今後は、この10カ国の持続可能な気候変動政策を行う意志と能力が、気候変動の非常に危険な状態を回避するための重要条件となるだろうと述べている。
前回と同じく、気候変動防止政策をどの程度実施しているかを5段階評価し、段階ごとに色別で示した世界地図が示されているが、本レポートでは、排出傾向及び、排出レベルに関しても5段階評価を行った世界地図を示している。(2009年には「優」の国はない)
良 | スウェーデン、ノルウェー、ドイツ、デンマーク、フランス、ハンガリー、英国、アイスランド、インド*、メキシコ*、ブラジル* |
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平均的 | アルゼンチン、ベルギー、スイス、チェコ、スロバキア、アイルランド、ラトビア、リトアニア、ブルガリア、モロッコ、アルジェリア、ポルトガル、スペイン、マルタ、インドネシア* |
乏しい | フィンランド、エストニア、オランダ、ウクライナ、ベラルーシ、ポーランド、イタリア、スロベニア、クロアチア、南アフリカ共和国、ルーマニア、トルコ、イラン、中国、日本、韓国、タイ*、台湾、シンガポール*、ニュージーランド |
大変に乏しい | オーストリア、オーストラリア、ルクセンブルク、サウジアラビア、ロシア、カザフスタン、米国、カナダ、マレーシア、ギリシャ、キプロス |
*これらの国の全排出量の10%以上が土地利用の変化によるもの。ただし関連するデータのない国もあることから、指標の評価には森林伐採や土地利用による排出量は考慮していない。
また、排出量の動きや、排出量レベルの比較を行い、それぞれの結果を「部分的結果」として世界地図に表した図も掲載。
排出量の動きにおいては、気候変動を阻止するために十分効果的な削減ができている国は一つもないが、そんな中で、スウェーデン、ドイツ、イギリスなどは再生可能エネルギー使用量拡大によって成果を挙げつつある。
排出量レベルについては、特に、アメリカ、カナダ、ロシアにはCO2排出に関し、世界的に多大な責任があるが、排出量を減らすだけの力は十分にあると指摘されている。ここでも「優」とされるレベルの国はなかった。
また、本レポートでは、総合評価で4位(最上位)のスウェーデンと43位の日本を比較し、12の指標をもとに評価している。(表3)
各指標に、非常に高い、もしくは非常に低い評価が1つか2つあれば、それが総合評価に大きく影響している。スウェーデンは、各指標ランキングと総合評価との間に大きな差がある一例で、相対的には高評価ではあるものの、どの指標においても3位以内に入っているものは一つもない。一方、一つの評価が総合評価に大きく影響をもたらしている例が日本である。日本は気候変動政策のランキングで57か国中53位だったため、総合評価も43位と沈んでしまった。
興味深いことに、この2カ国の共通点は、どちらも再生可能エネルギーの開発が進んでいないことである。評価期間内のエネルギー生成における再生可能エネルギー使用率は、日本がわずか2%の伸び、スウェーデンはまったく増えなかった。92%の増加を記録したドイツなど他国と比べると、これは非常に乏しい結果である。初期値が低い日本にとってはなおさらだ。日本の再生可能エネルギー分野は大きな可能性を秘めているが、最適な使用がなされていない。それどころか、資源不足のため、日本は核と化石燃料を大量に輸入している。
その一方で、日本は道路交通に関する評価が突出している。運輸部門におけるCO2が4%の削減を実現、工業国の中ではドイツに次いで2位となっているのだ。これは「トップランナー制度」により、自動車やそのほかの輸送機関のエネルギー効率が向上した結果と思われる。
産業部門でのエネルギー効率が向上し、家庭部門の排出量が大幅に削減されたスウェーデンと比べ、高度の産業国であり、従来のエネルギーの不足によりエネルギー効率型経済への移行が求められる日本の排出レベルが平均以下であることは「驚くべきこと」と、日本の評価は手厳しい。世界で5番目に多くCO2を排出している国として、「日本は気候を守るために一層の努力をしなければならない」と本レポートは指摘する。運輸部門の施策は例外として、気候変動政策も「大変に乏しい」と判断されている日本は、CO2排出削減のために拘束力のある政策や条例などを実施するなど、更なる取り組みをしていくことが求められているのだ。