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日刊 温暖化新聞|温暖化REPORT
著者: | Eric Martinot Janet L.Sawin |
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発行: | 21世紀のための再生可能エネルギー政策ネットワーク(Renewable Energy Policy Network for the 21st Century, REN21)
http://www.ren21.net/
Copyright © 2009 Deutsche Gesellschaft für Technische Zusammenarbeit (GTZ) GmbH. |
発行日: | 2009年5月13日 |
ページ数: | 31ページ |
入手先: | PDFダウンロード |
- 「2009年世界の再生可能エネルギーの現状報告書」は、再生可能エネルギーに関連する市場や投資、産業の動向、そして再生可能エネルギーの利用を推進する世界各国の政策および農村地域でのエネルギー源についてまとめた報告書。2005年の第一版から数え、今回で第四版となる。歴史的かつ世界的な経済危機の最中における再生可能エネルギーの現状を描く。
- 21世紀のための再生可能エネルギー政策ネットワーク(REN21:Renewable Energy Policy Network for the 21st Century):2004年に発足した国際機関、政府、企業団体、NGOのメンバーで結成されたネットワーク。エネルギー分野や開発分野、環境分野における利害関係者の協力に基づいて、国際的なリーダーシップを発揮するための情報交換の場を提供することで、発展途上国および先進国での再生可能エネルギー利用拡大に向けた政策展開を支えることを目的とする。
概要
再生可能エネルギーは、気候温暖化の抑制やエネルギー安全保障の鍵となるだけでなく、最近の世界経済危機の影響によって市場が低迷するなか、成長が約束された産業部門として注目を浴びている。世界各国が再生可能エネルギー政策の導入や見直しを進め、2009年初めには、再生可能エネルギーの政策目標を掲げる国は73カ国となった。
本レポートは世界市場概観、投資フロー、産業の潮流、政策展望、農村地域(独立型)自然エネルギーの5つのセクションにわけて、再生可能エネルギーの現状について詳しく解説する。国別ランキング(2008年)によると、日本は太陽光発電(系統連系型)の新規容量で米国、韓国、イタリアと並んで3位(昨年は2位)、既存容量で3位(昨年は2位)、小水力と太陽熱給湯・冷暖房で昨年と変わらずそれぞれ2位と4位だった(表1)。
世界市場概観では、再生可能エネルギーを利用した発電や給湯・冷暖房の設備容量の伸びや、バイオ燃料製造量の増加について世界各国に関するデータを用いて分析している。再生可能エネルギーによる発電容量は世界全体で2億8,000万kW(大規模水力を除く)に達し、この調査を開始した2004年と比較して75%増加した。再生可能エネルギー発電容量が最も多いのは中国(7,600万kW)で、次に米国(4,000万kW)、ドイツ(3,400万kW)と続き、日本(800万kW)は6位だった。中でも最も増えたのは風力発電容量で、2008年における既存の風力発電設備の容量は29%増で1億2,100万kWに達し、特に米国(840万kWの増加)と中国(630万kW)で大幅に導入が進んだ。太陽光発電容量(系統連系型)も年間70%増と飛躍的な伸びを見せ、1,300万kWとなった。新規容量の増加が著しい国はスペイン(260万kW)とドイツ(150万kW)で、日本(24万kW)は大きく引き離された。また、太陽熱給湯・冷暖房も前年と引き続き伸びており、日本は新規容量で世界6位(2007年)となり、10万kWth増加した。ほかにも、小水力、バイオマス発電、地熱、集光型太陽熱発電(CSP)やエタノール燃料などに触れており、いずれも増加傾向にある。
投資フローについては、再生可能エネルギー産業における市場の動きを具体的な数字を用いて示す。2008年における世界の再生可能エネルギーへの投資額は推定1,200億ドルにのぼり、2006年の630億ドルと比べて2倍に増加した(表2)。分野ごとの投資額(2008年)の内訳は概算で、風力が42%、太陽光が32%、バイオ燃料は13%、バイオマス・地熱(発電と熱利用)は6%、太陽熱給湯は6%、小水力5%となった。2008年において再生可能エネルギーへの最大の投資国は米国(表1)で、その額は世界の総投資額の20%を占める240億ドルにのぼった。2008年末から2009年初めにかけては、金融危機対応策の一環として多数の国が、再生可能エネルギーや、低炭素型あるいはクリーン技術への財政支援を大幅に増加する計画を発表した。これらの計画の大半が、数百万の「グリーン雇用」に的を絞った経済刺激策と雇用創出に向けられている。日本は向こう5年間で1兆円の予算案を発表した。
産業の潮流では、世界各国の再生可能エネルギー企業の生産能力の増加や、生産拠点の拡大などについて取り上げられている。再生可能エネルギー企業は大幅に増加し、2008年8月までで少なくとも160社(時価総額が1億ドル以上の企業)となった。2008年8月時点でこれらの企業の時価総額を合算すると推計2,400億ドルを超えると推定される。2008年の太陽電池の生産量は、中国(180万kW、台湾を除く)が日本から1位の座を奪い、ドイツ(130万kW)が2位に浮上し、日本(120万kW)は3位に後退した。ドイツ企業や中国企業の追い上げで日本のシャープは世界4位に転落している。風力発電産業で大きな変化が見られたのは中国で、多くのタービン製造企業や部品製造業者が新たに生まれたほか、小規模風力タービンの製造も増加した。米国も風力タービンの生産設備を新設し、国産品のシェアを増大した。そのほか、スペインと米国で著しい発展を遂げたCSP産業や、北米と南米で成長したエタノール産業とバイオディーゼル産業、そして米国、カナダ、欧州などで技術開発が進むセルロース系エタノール産業の動向にも注目する。
政策の展望では、再生可能エネルギー促進に向けた国や自治体レベルの政策を紹介する。また、2009年初めに発足した国際再生可能エネルギー機関(IRENA)についても詳しく説明している。2008年と2009年始めには多数の国で新たな国家レベルの目標が設定された。日本も太陽光発電の導入を推し進め、2020年までに1,400万kW、2030年までに5,300万kWに達するよう新たな国家目標を掲げた。
発電促進政策は、少なくとも64カ国で導入されており、「固定価格買取制度」や「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(RPS法)」、また補助金、税制優遇措置などがある。ほかに、太陽熱給湯・冷暖房への政策や、バイオ燃料目標、グリーン電力購入について説明している。日本は、分散型太陽光発電に対する固定価格買取制度の導入を発表した。また、学校や病院、鉄道駅に対する太陽光発電補助金を設置費の33%から50%への引き上げに加え、2005年に打ち切った家庭用太陽光発電設備への補助金制度(設置費の10%弱)を復活した。さらに2020年までに新築住宅の3分の2以上に太陽光発電を設置することを計画している。バイオ燃料についても、2012年までに製造量を5億リットルにするという目標を設定している。
世界各国の自治体の取り組みの例として、東京都が2010年までに100万kW相当の太陽光発電を導入することを目標に掲げ、国の補助金に加えて都から補助金を支給する計画や、グリーン電力証書に類似した「グリーン熱証書」制度を採用し、2010年に開始予定の炭素キャップ・アンド・トレード制度に取り入れることが紹介されている。日本は他にも300を超える自治体が再生可能エネルギーの普及に取り組んでいる。
農村地域(独立型)自然エネルギーについて2008年に見られた新しい傾向として、従来よりも小規模の独立型太陽光発電設備の導入が挙げられる。特に1~5ワット規模の低価格の独立型太陽光発電設備は、超低消費電力LED蛍光灯(発光ダイオード)などの最新技術と併用すると、低所得層に有効なサービスを提供できる。また、世界銀行によるエチオピアでのプロジェクトで約100万台の省エネ型調理ストーブが販売されるなど、国際支援による再生可能エネルギーの普及プロジェクトを取り上げるほか、各国が実施する再生可能エネルギーを利用した電化政策や計画を紹介する。
レポートの巻末には、「2008年の再生可能エネルギー新規・既存容量(推定)」など再生可能エネルギー源別の詳しい分析や「2008年風力発電新規・既存容量の上位10カ国」など各国の比較表、「固定価格買取制度を導入している国、州、地域の累計数」など政策に関する資料が、多数掲載されている。